コンテンツに進む
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_00_top.jpg__PID:ca905c10-235e-405f-9b28-73707b97c174

COVERCHORD FEATURE

MARMOT CAPITAL
AW 2023 COLLECTION
KIKUNO Special Interview

先月ローンチされたばかりの新ブランド〈MARMOT(マーモット キャピタル)〉。
ディレクター菊乃氏がクリエイティビティについて語る。

Vol.2 10月14日(土)発売

アメリカの老舗アウトドアブランド〈Marmot〉のアーカイブをベースに、ストリートでも着られるようにデザインされた日本発の新ライン〈MARMOT(マーモット キャピタル)〉。

デザイナー、クリエイティブディレクター、モデルなど様々なシーンで活躍する菊乃氏をディレクターに迎え、今シーズンよりスタートした注目のユニセックスブランドだ。

今回COVERCHORDでは、菊乃氏に〈MARMOT〉への想いを訊いた。SNSを通して発信されるスタイルや、独自のセンスとアイディア、程よく力の抜けた自然体なムード。あふれ出る彼女の魅力の源を紐解くインタビュー。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_01.jpg__PID:e1ca905c-1023-4e20-9fdb-2873707b97c1

KIKUNO
Special Interview

—どのような経緯で〈MARMOT〉のディレクターに?

以前「UNITED ARROWS&SONS」で働いていた際に、このプロジェクトの責任者の方に出会い、今回のお話とディレクターのオファーをいただきました。私はブランド全体のディレクションと企画、デザインを半分くらい、それからSNSなどで展開するヴィジュアルのディレクションまで担当しています。ファーストコレクションには、〈Marmot〉アーカイブの改良版のようなデザインがいくつかありますが、ほとんどが新しいデザイン。あまり制限なく、自分の作りたいものを作らせてもらっています。

—〈MARMOT(マーモット キャピタル)〉の意味合いとは?

〈Marmot〉は、Mだけが大文字表記。本ラインとの差別化もありますが、全く別のものとしたかったのでロゴも名前も新しくしたくて、ダメもとでお願いしたらOKに。自分がディレクションするラインが本ラインの中に入るというのが想像できなかったので、絶対に譲れないポイントではありました。
〈MARMOT〉はすべて大文字。最初、「大文字MARMOT(マーモット)」って呼んでいたのですが、その時は意味まで考えてなく、ただ違う見せ方ができたら良いよね、違うラインと認識して欲しいという感覚で大文字にしたらいんじゃないかっていうシンプルな発想でした。
そう呼んでいるうちに、「大文字MARMOT」が裏の呼び名みたいでかっこいいなというのと、いつか〈MARMOT〉が古着と呼ばれるくらいのものになった時、その時まであるかわからないけど、「『大文字MARMOT』っていうのが昔あって、日本人の女性がデザインしていた幻のラインらしい」みたいに語ってもらえたら面白いなと思って。大文字=キャピタルで、ブランド名になりました。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_02_A.jpg__PID:32e1ca90-5c10-435e-a05f-db2873707b97
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_02_B.jpg__PID:bc32e1ca-905c-4023-9e20-5fdb2873707b
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_02_C.jpg__PID:13bc32e1-ca90-4c10-a35e-205fdb287370
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_02_D.jpg__PID:1c13bc32-e1ca-405c-9023-5e205fdb2873

—「COMFORT and FREEDOM」をコンセプトに、アウトドアだけでなくストリートでも着られる服をユニセックスで提案していますが、コンセプトに込めた思いについて教えてください。

「COMFORT and FREEDOM」というコンセプトは、ブランドのコンセプトでもあり、私自身のスタイルや、追求しているスタイルのキーワードでもあり、フィロソフィーでもあります。自分を表す言葉ですね。アウトドアのシーンでもしっかり着られることを前提に素材を採用していますが、それを街でも着られるという選択肢がある。スペック的に山登りに着ていけるけど、街でスラックスに合わせてもいい。合わせるアイテムによってサイズ感やシルエットが調整できるように、ドローコードをたくさん付けたりして。サイズの振り幅はじめ、自分の中で選べる選択肢がたくさんあることは素敵なことだと思うから、自由に選んでねという思いでデザインしています。

自分がどういうふうに服を着たいかって、人それぞれだと思うので、その選択肢を与える。どう着るか、何と合わせるかも自由だし、どこで着るかも自由。
〈GORE-TEX〉のジャケットをゲットしたことで、山に行ってみるという選択肢が増えるかもしれない。その服を着ることによって生まれるフィーリングとか、新しいことに挑戦できるようになったとか、そういうものを体感して欲しい。
だから、あまりこういうスタイリングで着て欲しいとかはなくて、このブランドから何かドアが開いたら良いですし、可能性を広げたい。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_03_A.jpg__PID:d51c13bc-32e1-4a90-9c10-235e205fdb28
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_03_B.jpg__PID:70d51c13-bc32-41ca-905c-10235e205fdb
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_03_C.jpg__PID:ce70d51c-13bc-42e1-8a90-5c10235e205f
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_03_D.jpg__PID:e5ce70d5-1c13-4c32-a1ca-905c10235e20

—菊乃さんらしさや、オリジナリティはどのように表現していますか?

ディレクターとして関わる上で、自分がやる意味を入れないといけないですし、そうじゃないと意味がないと思っていました。
私はアウトドアにそこまで馴染みがあるわけではなく、普段着る洋服としてしか服を見てこなかった。アウトドアブランドの強みはやはり素材。〈GORE-TEX〉とか〈POLARTEC®〉に馴染みがない人もまだまだ多いと思うので、それを引っ張っていけらたらいいですよね。そこと自分のエッセンスを融合させたらどうかなっていうところから生まれたものが多いかもしれません。
アイデンティティでもあるパープルをはじめ、明るい色味を選んでいて、フリースのパンツとかもシルエットは一見全然アウトドアっぽくないし、だけど生地は〈POLARTEC®〉。そういうストリートやシティなエッセンスを加えられるのは、自分らしさなのかな。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_04.jpg__PID:8ee5ce70-d51c-43bc-b2e1-ca905c10235e

—ディレクションの面白さや難しさはありますか?

ディレクターの仕事は向いていると思っています。イエス / ノーがはっきりしているし、それを決めることが気持ちよかったりするので、ディレクションで関わっている他ブランド含め、前提としてブランドのイメージがあって、それに沿って想像を形にしていくだけなので、そんなに難しいことではない。〈MARMOT〉はローンチ前だったので、世間の反応を見ていない状態でした。ちゃんとできたのかなとか、気になるところはありますけど、自分の選択するもの、色とかコンセプトも、そういうところには自信を持って取り組んでいるので、良いものが仕上がっていると自分で思いますし、それが良いと思っています。

—自分自身のファッションスタイルにルールはありますか?

何系とも言われないスタイルが好きですね。ストリート系、古着系って括られるの、すごく嫌で。何者でもない、ちょうど中間みたいな、いいバランスのところにいるのが好き。
何にも似ていない感じは意識していますね。メンズの洋服を着ているけど、ちゃんとどこか女っぽい。そこは最近できるようになったことではあります。トータルメンズだと、THEストリート女子みたいになっちゃうから、ゴールドのアクセサリーを選んだり、バッグ、靴は良いものを持ったり。女性らしさだけでなく、バランスが取れるものを意識的に合わせています。
あと自分の好きなシルエットがあるので、それに沿って選ぶ。体型とか着た時のサイズ感も意識しています。ちょっとだけTシャツをインした方が可愛いなとか、パンツの丈とか。自分の一番いいバランスで着られるようにお直しも結構出します。慣れというか積み重ねでスタイルが出来上がっているところがあるのかな。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_05.jpg__PID:a48ee5ce-70d5-4c13-bc32-e1ca905c1023
CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_06.jpg__PID:aca48ee5-ce70-451c-93bc-32e1ca905c10

—SNSを通した自身の活動もされていて、そこにもセンスや感度が必要だと思います。発信を続けていく上で意識していることはどんなことですか?

恥ずかしさがあるんですよね、SNSで発信することに対して。それを誤魔化すようにしているのかも。本当は可愛く撮れた自撮りがあったらフィードに載せたいですけど、それをやっている自分、結構キモいとか思っちゃう。苦手な部分ではあるかもしれない。
YouTubeもInstagramも自分が発信するプライベートなサイドはユーモアがないとつまらない。自分のフィルターを通すとこうなりますよという発信の仕方は、心がけるようにしているかな。それが自分ならではだと思うし、自分の発信したい感じでもある。
ただおしゃれとか、ただ可愛いってつまらないって思っちゃって。その人らしさ、文章もあの人らしいなって感じられる方が面白い。ユーモアみたいなものが生きれば、面白くなる。得意な分野じゃないと思いつつも、自分にしかできないことをやっているし、そこに自信もある。
今のこの時代を生きていく上で、大事なことで、ちゃんと味を出すことが面白いことで、それを認めてもらうことが楽しいとも思う。自分の像みたいなものを自分の手で作り上げている感じはあります。

—センスがいいなと感じる人はどんな人ですか?

Chloë Sevigny(クロエ・セヴィニー)は、ロールモデルと言ってもいいかもしれない。あとSofia Coppola(ソフィア・コッポラ)、Petra Collins(ペトラ・コリンズ)も好き。人生において彼女たちの歩んだ道が、素敵だなと思う。
クロエはストリートとも関わりが深い人なので、そういう部分を自分と重ねてみちゃったりします。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_07.jpg__PID:b8aca48e-e5ce-40d5-9c13-bc32e1ca905c

—プライベートと仕事と境目があるようでないようにも見えますが、自分なりに決めていることはありますか?

あんまり働きすぎないようにはしています。フリーランスで仕事をしているので24/7 (Twenty four seven)、働いていてもいいわけだけど、何も考えずソファで昼寝する時間も欲しい。だから土日は絶対休むようにしているかな。
旅行に行ったり、運動、ランニングをしたり、リフレッシュの時間もちゃんと取るようにしていますね、基本的なことですけど。
とはいえ、お洋服が好きだし、ディレクションのお仕事すごく自分に向いていると思うから、ストレスや悩みを抱えることがあんまりなくて。それがバランスよくできている結果なのかなと思います。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_08.jpg__PID:2db8aca4-8ee5-4e70-951c-13bc32e1ca90

—今どんなことに興味がありますか?

健康管理。管理することが好きな部分ではある。趣味・特技は、健康!とよく言っていて、メンタルにも通じると思っています。
よく眠れていないと、元気がなくなってメンタルが崩れていく。それってただの悪循環だと思うから、なるべく健康でいるようにしていますね。ジム行ったり、朝1時間散歩したり。早寝早起き、3食ちゃんと食べるとか。基本をしっかりやることが大事。あまりエクストラなことをやっても、続かない。自分に合った健康法、生活習慣みたいなものを見つけられたのかな。
今は早い時は22時とか、日付が変わる前に寝て、5時、6時に起きてます。早寝早起きも自分に合っているし、できるようになってすごくよかった。

—これから先の10年はどんな自分でいたいですか?これから挑戦してみたいことなどはありますか?

あんまり考えたことないですね、今が良かったらいいなと思っていて、今の一瞬一瞬を上手に積み上げていけたら、多分10年後も同じ気持ちで過ごせていると思う。先のことを考えるのが得意ではなくて、考えたところでそれが本当に起こるかどうかもわからないですしね。
希望はなんとなくあります。もう少し自然の多いところで生活したいとか、もうちょっと海外に長くいられる時間があったらいいなとか。海外に行く意味の一つでもあるんですけど、もう少し世界を広く見たいというか、自分がどれだけ大きなところの小さな部分なのかを考えないと、どんどん狭くなってしまう。
東京もすごく狭い街だけど、海外から見た東京は、東京にいる時の自分の目線と全然違ったりする。海外の人の視点で日本を見てみたいし、その視点が面白いと思うので、海外には出て行きたいですね。

CC_FEATURE_MARMOT_CAPITAL_AW23_09.jpg__PID:a42db8ac-a48e-45ce-b0d5-1c13bc32e1ca

菊乃(きくの)
東京都生まれ。
幼少期から音楽やストリートカルチャーに触れて育つ。写真学科専攻後、19歳から4年間をサンフランシスコとロンドンで過ごし、帰国後2015年に自身のブランド〈PURPLE THINGS〉を立ち上げる。また、〈MARMOT(マーモット キャピタル)〉をはじめとするブランドのディレクション、モデルとしても活躍中。

YouTube_STAYINBED
Instagram_@kiki_sun

Interview & Text_Maiko Okuhara
Photography_Hideaki Nagata

Vol.2 10月14日(土)発売

x