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特集記事

COVERCHORD CULTURE

クリエイターにきく、
年末年始に見たい映画とドラマ。
2022 - 2023

毎年恒例の好評特集。活躍するクリエイター6名に、
年末年始に観たい映画・ドラマシリーズを聞いた。

COVERCHORDの年末恒例特集として、各界で活躍するクリエイター6名に、年末年始に観たい映画・ドラマシリーズを聞いた。

クリエイターならではの目線で厳選し、イチ推ししてもらった3本。いつもと違いゆったりとした時間が流れるホリデーシーズン。何を観ようか?誰と観ようか?のご参考にどうぞ。

Pilgrim Surf + Supply
Chris Gentile
が選ぶ 3本

『戦艦ポチョムキン』/ Battleship Potemkin
1925年 ソビエト連邦
監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン / Sergei Eisenstein
帝国主義体制に対する革命と、現在のウクライナ国民の闘争に関連する歴史的な映画です。


『ざくろの色』/ Sayat Nova (The Color Of Pomegranates)
1969年 ソビエト連邦
監督:セルゲイ・パラジャーノフ / Sergei Parajanov
視覚的に豊かで暗号のような図像の映画。
話し言葉の台詞よりも視覚的な物語を通して消化する必要があります。


『自転車泥棒』/ Bicycle Thieves
1948年 アメリカ
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ / Vittorio De Sica
闘争、残酷さ、喪失、そして美しさについての映画。
私たちのもろさを思い知らされる。

Chris Gentile(クリス・ジェンティール)
Pilgrim Surf + Supply CEO

Website_pilgrimsurfsupply.com
Instagram_@pilgrimsurfsupply

nonnative
藤井隆行
が選ぶ3本

『秋刀魚の味』/ An Autumn Afternoon
1962年 日本
監督:小津安二郎 / Yasujirō Ozu
映画監督・小津安二郎氏の遺作でもある『秋刀魚の味』は、嫁いでゆく娘と父の情景を描いた、一見単調なストーリーですが、視点を変えると実はものすごくクリエイティブな刺激を受ける作品。
映像としての美しさは勿論、インテリアや民藝品などプロップの緻密な配置、服から食事に至るまでのスタイリングなど……極限にまでこだわり抜かれた作り込みに感動します。
個人的には数少ないカラー展開の小津作品が好きで、色彩使いが美しい。
何度も撮り直しがきかない時代がゆえのクリエイションにかける緊張感と、鑑賞者に余白を委ねる手法からは学ぶものが多いです。
実は「衣食住」の形は今と昔で進化していない事に改めて気付かされます。それらを表現する手法や技術は目まぐるしく進化しているけれど、完成するものは一緒。
回数を重ねるごとに新たな気付きのある、繰り返し観たい作品。


『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』/ Hearts and Flowers for Tora-san
1982年 日本
監督:山田洋次 / Yoji Yamada
年末年始。時間もたっぷりあることだし、「知っているけど手を出せていない」シリーズ映画たちを鑑賞してみては?
数多ある「男はつらいよ」シリーズからは『寅次郎あじさいの恋』を入門作品としておすすめします。
寅さん自身の惚れた腫れたが描かれる、シリーズ中盤作品が特に面白い。
インテリアや民藝へのリスペクトを映像から感じつつ、作中に自分が見知った京都の「河井寛次郎記念館」や、鎌倉の町並みが登場するのが個人的に嬉しいです。
若い頃はとにかく邦画というカルチャーが大嫌いだったけれど、歳を重ねた今、その良さを噛み締めています。
この映画で描かれる1980年代前半の日本に活気が満ちている時代背景がとても好きです。


『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』/ The Price of Desire
2015年 ベルギー / アイルランド
監督:メアリー・マクガキアン / Mary McGuckian
近代建築の巨匠、ル・コルビジェと女性建築家であるアイリーン・グレイの生涯に渡る関係性と渦巻く嫉妬心を描いた作品です。
人間の感情を言葉を介さずに表現するフランス映画的な描写は、小津作品に始まる日本映画に通じる要素を感じます。
良い意味でタイトルに裏切られない、淡々としたストーリー展開ですが、どこを切り取っても絵になる映像美と登場する建築やインテリア家具がとにかく興味深い。
自分もシャルロット・ペリアンの家具を愛用する中で、日本とフランスにおける文化交渉の歴史を交えながら、インテリアを鑑賞するのが面白いです。

藤井 隆行(ふじい・たかゆき)
nonnative デザイナー
1976年生まれ。奈良県出身。武蔵野美術大学 空間演出デザイン学部を中退後、セレクトショップで経験を積み、2001年より〈nonnative〉デザイナーに就任。
以来、独創的で洗練されたモノづくりを展開、〈nonnative〉の世界観を確立してきた。

Website_nonnative.com
Instagram_@takayuki_fujii_

NOMA t.d.
野口真彩子
が選ぶ 3本

『リコリス・ピザ』/ Licorice Pizza
2021年 アメリカ
監督:ポール・トーマス・アンダーソン / Paul Thomas Anderson
好きな監督の1人であるポール・トーマス・アンダーソンの最新作。
1973年ロサンゼルスが舞台の青春映画。ストーリー、キャスト、映像、衣装、音楽の全てが好き。特に、三人姉妹バンドHAIMのアラナ・ハイムが初主演し、凄く良かった。
1970年代に起こった実話や実在した人物が緻密に入れ込まれていて、観終わった後に調べるのも面白い。my all-time favorite movieの『アメリカン・グラフィティ』(1973年)の空気感があり、これぞ青春映画。
また音楽をレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが担当していて一気に引き込まれ、毎日サントラをスタジオで流している。


『アメリカン・ユートピア』/ American Utopia
2020年 アメリカ
監督:スパイク・リー / Spike Lee
デイヴィッド・バーンのブロードウェイの舞台をスパイク・リーが映像化。
社会の歪みを痛烈に批判しながらも、楽観的でポジティブな方向へと目を向けさせる。70歳になるデイヴィッド・バーンの創造することへのパワーが凄い。
この流れでトーキング・ヘッズの昔のビデオを見るのも最高。


『マーダーズ・イン・ビルディング』/ Only Murders in the Building
2021年 アメリカ
監督:スティーヴ・マーティン & ジョン・ホフマン / Steve Martin & John Hoffman
一気に見てしまい、次のシリーズが待ち遠しい。ニューヨーク、アッパーウェストサイドの高級マンションが舞台。お洒落でアイロニックで、ウッディ・アレンの映画のよう。このエリアにはこういう人達が生活しているよね、とリアルで面白い。
ファッションで言えば、セレーナ・ゴメスやカーラ・デルヴィーニューが出ていて、セレーナの演じるキャラクターと衣装の組み合わせを見るのも楽しい。

野口 真彩子(のぐち・まさこ)
NOMA t.d. デザイナー
ロンドン「Chelsea College of Arts テキスタイルデザインコース」在籍中より、テキスタイルデザイナーとして活動していた野口 真彩子と、セレクトショップのディレクターやバイヤーを経験した佐々木 拓真がデザイナーデュオとしてブランドをスタート。野口は作家としてもギャラリーでの展覧会を定期的に行う。著作は作品集『Between Line And Pattern』(2017年)。

Website_nomatextiledesign.com
Instagram_@noma_textiledesign
Instagram_@masako_noguchi_ 

HAVEN
Arthur Chmielewski
が選ぶ 3本

『トップガン マーヴェリック』/ Top Gun: Maverick
2022年 アメリカ
監督:ジョセフ・コシンスキー / Joseph Kosinski
今年はあまり印象に残る映画を観ていないのですが、『トップガン マーベリック』は間違いなく印象に残る映画でした。
オリジナルの『トップガン』は幼い頃に見ていたので、とても懐かしかったです。
この映画は完璧な続編で、映画中ずっとハラハラドキドキ、アドレナリン全開で楽しめました。
まるで自分が戦闘機のコックピットにいるような気分で、特にひねりはないが、アクション満載で面白い。
映画の中では安っぽいシーンもありましたが、トム・クルーズとマイルズ・テラーは素晴らしい演技をしていました。


『一流シェフのファミリーレストラン』/ The Bear
2022年 アメリカ
監督:クリストファー・ストアラー / Christopher Storer
第1シーズンは、受賞歴のある若いシェフが、世界で最も有名なレストランを離れ、シカゴに戻り、兄が自殺した後、実家のイタリアンビーフ・サンドウィッチの店を経営する話です。
私の友人のレストラン関係者からは、この番組は厨房の過酷な環境をよく描き出していると言われます。ジェレミー・アレン・ホワイトと脇役たちの演技は素晴らしく、ドラマとユーモアがミックスされています。批評家から絶賛され、第2シーズン放映も決定しました。


『Untold: AND1旋風と夢の跡』/ Untold: The Rise and Fall of AND1
2022年 アメリカ
監督:ケビン・ウィルソン・Jr / Kevin Wilson Jr.
これは、私が子供の頃に好きだったスニーカーブランドの盛衰の舞台裏を描いた素晴らしい作品。
中高校時代、私はバスケットボールに夢中でした。ストリートボールとヒップホップカルチャーは、私がスニーカーやスポーツウェア、カウンターカルチャーに夢中になるきっかけとなったと言っても過言ではありません。ステフォン・マーブリーの1や2を買うためにシアトルまで行ったのもいい思い出です。
最終的には没落してしまいましたが、このドキュメンタリーは、〈AND1〉のような小さな会社が〈NIKE〉のような巨大企業に挑み、アンダーグラウンドや彼らのコミュニティと繋がることによって、多くのバスケットボールファンの心をつかみ、興味を持たせた素晴らしいアンダードッグストーリーだったと思います。

Arthur Chmielewski(アーサー・フミェレフスキ)
HAVEN ファウンダー / CEO / クリエイティブディレクター
2006年、兄のDaniel ChmielewskiとHAVEN Apparel Inc.を共同設立。
〈HAVEN〉のCEO兼クリエイティブ・ディレクターとして、バンクーバーとトロントにある小売店とともに、〈HAVEN〉ブランドのディレクションを担当する。

Website_havenshop.com
Instagram_@havenshop
Instagram_@arthurchmielewski

klarm ブランドディレクター
三嘴香澄
が選ぶ 3本

『ジョー・ブラックをよろしく』/ Meet Joe Black
1998年 アメリカ
監督:マーティン・ブレスト / Martin Brest
こんなに美しい映画を、私は他に知らない。
心底惚れ惚れするような映画なので、ロマンチックシーズンに見たいなと思い選びました。
品が良く優雅で、嫌味のない大人なファンタジーさとユーモアがバランスよく散りばめられているので見ている者を飽きさせず三時間があっという間に感じます。
忙しない師走を乗り越え、「よし、休むぞー」なタイミングで観ると、丁度よく脳を溶かしてくれそうな作品。
垣間見えるスーザンの知性を感じる間の取り方や視線。ビルの悟りと覚悟、愛の唱え。そして死神と青年の二役を演じ分けたブラピが良すぎる。もうイライラするくらいブラピがカッコいいんです。
美男子と擬人像役ってなんでこんなに相性がいいんだろうなァ……(遠い目)。


『コーヒー&シガレッツ』/ Coffee and Cigarettes
2003年 アメリカ
監督:ジム・ジャームッシュ / Jim Jarmusch
長らく人間の嗜好品として君臨している珈琲と煙草が全話に登場する、11のオムニバスムービー。
特段何か起こるわけでもなく、全員本人役で出演している役者たちによって会話劇が繰り広げられ、オチもあったりなかったり。眠れない時や夜中のぼぉっとした意識の中で見てもクスッと楽しめる映画です。
あまり頭を働かせずに見れるので、珈琲の黒やカップの白、ダイナーテーブルのチェス柄、タバコの煙の白など、モノクロの中にも目を引く小洒落た演出や、インテリアにも目を移せる。私は喫煙者でもなければ珈琲も飲めないのですが、不思議と引き込まれる映画です。


『フジコヘミングの時間』/ Fujiko Hemming Time
2018年 日本
監督:小松莊一良 / Soichiro Komatsu
世界中のあちらこちらに魔法をかけてまわっている、生きる現代の魔女、フジコ・ヘミングを追ったドキュメンタリー。
彼女の弾くピアノをBGMに、謎のベールに包まれた生活を拝見できるなんて……彼女の音に憧れてピアノを習った私にとってこれ以上ない贅沢な映画で、心の支えになった一本です。
音色、言葉、インテリア、映像、どこを切り取っても美しく儚げなアートブックを見ているかのようで、見終えるのが惜しくなる。
フジコヘミングを知らない方でもきっと楽しめるはずです。
慈愛に溢れ、古き良きものを愛し、貫く姿は逞しくかっこいい。自分らしく生きる女性を見ると活力が湧きますよね。
冒頭にある「人生は、時間をかけて自分を愛する旅」というその言葉を噛み締めて見終える、至福の作品です。

三嘴 香澄(みつはし・かすみ)
klarm ブランドディレクター
幼少期に発症した皮膚炎でのコンプレックスから、肌悩みに寄り添い伴走できるエステティック業界へと飛び込む。 施術指導や商品開発などの経験を経て2019年に独立し、「かけた時間が、ワタシを愛した時間」というブランドテーマを掲げるスキンケアブランド〈klarm(クラーム)〉を立ち上げ、プロダクトを使用する空間や時間そのものもデザインすることを意識し商品開発に勤しむ。傍ら、コスメブランドの立ち上げや処方開発サポートも手掛ける。

Website_klarmclay.com
Instagram_@klarmclay
Instagram_@kasumi_mitsuhashi

COMESANDGOES
佐藤一歩
が選ぶ 3本

『ベルリン・天使の詩』/ Der Himmel über Berlin
1987年 西ドイツ / フランス
監督:ヴィム・ヴェンダース / Wim Wenders
ベルリンの壁崩壊前のベルリンの街を舞台に、天使と、日々を生きる人間たちの物語です。
私たちが普段すっかり忘れている、日々のちょっとしたことが幸せである事や、私たちが普段無自覚な感覚(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、温覚、冷覚、痛覚)を呼び覚ましてくれる映画です。映画に奇跡があるのだとしたら、この映画はその一つだと思います。
1年に1回は見たい映画です。


『ポンヌフの恋人』/ Les Amants du Pont-Neuf
1991年 フランス
監督:レオス・カラックス / Leos Carax
パリのポンヌフ橋を舞台にした、若き男女のホームレスの激しい物語です。
私が17歳の時に渋谷の映画館で見た時の衝撃が、それから30年を経た今見ても変わる事のない映画です。
映像の美しさや色(今は亡きジャン=イヴ・エスコフィエの撮影)と、ダイナミックにエモーショナルに突き進んでいく物語に、映画を見る喜びとはこう言う事なのかなと今も思います。
この映画は、何度も何度もトラブルに見舞われ、中断と再開を繰り返し、全員がボロボロになりながら完成にこぎつけた、エピソードにも事欠かない凄まじい映画です。


『ディパーテッド』/ The Departed
2006年 アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ / Martin Scorsese
ギャングに送り込まれた警察の男(レオナルド・ディカプリオ)と、警察に送り込まれたギャングの男(マット・デイモン)の人生がやがて交錯してゆくスリリングな映画です。
スコセッシのもと、1番油が乗っていた時代のディカプリオとマット・デイモンの初共演(現時点では唯一)であり、さらにジャック・ニコルソンをはじめとした曲者俳優たちが脇を固め、最後の最後までグルーヴ感と緊張感を維持したまま突き進んで行く一流のエンターテーメント映画です。
そしてなぜか何度も見たくなる中毒性のある映画でもあります。

佐藤 一歩(さとう・かずほ)
COMESANDGOES デザイナー
1975年生まれ。2012年、帽子を中心としたブランド〈COMESANDGOES(カムズアンドゴーズ)〉を立ち上げる。

Website_comes-and-goes.com
Instagram_@comesandgoes_com
Instagram_@satokazuho

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