WESTOVERALLS
TASSEI ONUKI INTERVIEW
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WESTOVERALLS
TASSEI ONUKI INTERVIEW

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初めてジーンズを穿いたときのことを覚えているだろうか。幼い時分に背伸びがしたくて手を伸ばしたり、テレビや雑誌で見たアメリカへの憧憬をそこに重ねたり......。理由は人それぞれでも、誰しもが平等にデニムの魅力に触れて、それと自分らしく付き合ってきた。そんな誰かの初期衝動から年月が経った2017年の春、WESTOVERALLSは生まれた。一部の好事家たちのためだけではなく、装うことの楽しさを知る、万人のためのジーンズを作るために。
大貫達正はデザイナーとしていくつかのブランドやショップに携わり、その人気を後押ししてきた。アメリカやヨーロッパのカジュアルウェアからテーラリングまで、幅広いスタイルに造詣が深い彼だが、その根底にあるのは間違いなくヴィンテージだ。 「僕は18歳から古着屋で働いていて、29歳までを古着のバイヤーとして過ごしました。元々プロダクトというか、モノが好きだったんでしょうね。ジーンズっていう言葉を覚えたのがもう3、4歳くらいの頃で、オシャレの入り口は完全にジーパンでした。小学生の頃にはお年玉を握りしめて(Levi's®の)"ビッグE"を買いに行ったりとか。多分、小さい頃から格好つけて目立ちたかったんです(笑)」。

中学時代の文集では、すでに将来の夢はファッションデザイナーだと語っていたそうだ。しかし、学校でデザインを学んだことや、誰かに師事したことはないという。古着屋で働き始めてからの経験だけが、彼のデザイナーとしてのキャリアを支えてきた。 「19歳のときにお店を任されて、買い付けをするようになったんですけど、当時はどこの古着屋もアメリカものばかりだったから、何か違うものを探そうと思って、たどり着いたのがヨーロッパ古着でした。イギリスに行ったらポートベローでハンドメイドのジャケットを見たり、フランスに初めて行ったときはノルマンディにあった大きな古着の倉庫に行かせてもらって、今までに見たことがないようなものをたくさん知りました。その倉庫も、僕が行った時には偶然(マルタン・)マルジェラが来ていたりとか、そういう場所だったんです」。

そうした経験を元に、当時所属していた古着屋でデッドストックの生地を使用してオリジナルの服作りを始めたそうだ。以来、古着とデザインの2つが彼の核となり、独立後はフリーランスとして活動をすることになる。

そして今年、彼はWESTOVERALLSを立ち上げた。

そのファーストコレクションはオリジナルのデニム地を使った5型(801S, 806T, 803W,817F, 850B)のジーンズを中心に、トラッカージャケットやいくつかのウェアと小物類がラインナップされた、シンプルかつコンパクトなもの。デザインに長く携わってきた大貫の経歴を思えば、意外なほどにミニマルだ。

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「デニムが好きだっていう人は多いと思うんですけど、どういう視点で好きなのかはバラバラだと思うんですよ。僕は多分、あらゆる視点でデニムが好きなんですよ。だから、こだわりの強い古着屋のデニム好きとかが気に入ってくれるのも嬉しいけど、それだけじゃなくて、例えば女の子が穿いても素直に可愛いと思えるようなものを作りたかった。それで、人それぞれにあった形で穿いてもらえるようにしたくて、必要だなと思ったのがこの5型でした。むやみに大きめを選ばなくてもジャストサイズでバギーが穿けたりとか、自分に合ったサイズで本来のシルエットをちゃんと楽しめるように」。

今後も定番として継続される5つのシルエットのデニムは26から34インチまで、2インチ刻みでサイズが展開され、来シーズンからは細身の女性に向けた24インチも加わるそうだ。一方、トラッカージャケットなどのサイズ表記を見ると、"A"や"F"という見慣れない文字が刻まれている。

「これは501のヴィンテージにビッグEのAタイプ、Sタイプ、Fタイプと言われるモデルがあり、それをもじったもので小さい方から"A"、"S"、"F"の3タイプあるんですが、いわゆるS、M、Lみたいなグレーディングではないんです。例えば、普段自分がSサイズだと思ってる人だと、Lサイズって表記されているものは買いにくいじゃないですか? そういう概念をなくすために、あえてサイズではなくタイプとういう表記にしています。それも単純に大きくなるだけじゃなくて、例えば"A"と"S"では形自体が全然違います。ジャケットだったら、袖口のボタンの距離を広く採って、小さい方で留めると女の子でも"S"が良いバランスで着られたりとか、アレンジが効くようになってるんです」。

幅広い体型の人にフィットして、先入観に邪魔をされずに、自分の気分に合った着方を選んでほしい。WESTOVERALLSのサイズ展開には、そんな大貫の思いが込められている。定番としている5つのシルエットにはフレアやストレート、テーパードなどが含まれるが、あえて明言はしていないという。

「これもサイズと似ているんですが、僕は人間が穿いたときの形で分けているんです。例えば、このデニムは物として見ると裾が狭まっているけど、穿くと真っ直ぐ見えるように設計していて、これが僕にとってのストレート。お客さんが混乱しちゃうから、"あえてシルエットは謳ってません」って卸先の方にも説明しているんです」。

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人が足を通した際に一番見栄えがすること。そんなこだわりを象徴するディテールのひとつが、ウエストの内側にあしらわれた、ゴムのマーベルトだ。視覚的にもキャッチーで、かなりモダンなアレンジに見えるが、大貫はこれを'50年代に実在した、デニムブランドのとあるラインから着想を得たものだと教えてくれた。

「これがあることで、穿いたときにより腰に馴染むんですよ。それに濃い色のデニムでも、これがあるとタックインをした時に色移りがしないっていう利点もあります」。

岡山県は井原市にある工場に大貫が直談判して生産してもらったというオリジナルの13.5オンス生地は、ヴィンテージライクな美しい色落ちも魅力のひとつ。腰のマーベルトによって、それが気兼ねなく楽しめるのだ。ファーストシーズンではリジッドとワンウォッシュ、バイオウォッシュをかけたものとアイスブルー、そして黒を加えた5つのカラーがそれぞれのモデルに揃う。ブラックデニムは昨今多い緯糸も黒のものではなく、縦糸が黒、横糸は白という昔ながらの表情というのがポイントだ。

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「僕も昔は、知識を一生懸命身につけたし、それをひけらかして愉悦に浸ってたような時期もありました(笑)。だけど自分で服を作るようになってからは、それが世に出て手に取ってもらえたり、買ってくれるお客さんがいた。そういうことを実感するうちに、自然とそういう主張はなくなりました。多分、"これはこうだからこうなんだぜ!"とか、伝えたいっていう気持ちが、物として世に出ることで満たされていったんだと思います」。

ジーンズの縫製に使っている糸は一見すると昔ながらの綿糸だが、実は中心部分だけはポリエステルで、耐久性をしっかりと備えたコアヤーンと呼ばれるもの。生地も旧式のシャトル織り機ではなく、最新の機械を使って織られたもので、生地目がフラットで度目の詰まった上品な質感や、穿きこんでも斜行しにくく、膝などが抜けにくいという利点を備えている。デニム好きの間では常套句のように使われるセルビッジをあえて排しているのも、生地の端という制限が穿いたときの理想的なシルエットを作るための障害になると考えたからだ。

「きっとその方が、みんなが"穿いてみようかな"、って思える気がするし、長く付き合えるだろうから」と大貫はつぶやく。

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〈LEFT〉
洗いの掛かっていない13.5オンスのブラックデニムを使った、巾着型のバッグ。開口部にのみ補強を加え、他は裏地を省いたシンプルな仕様。使い込むうちにどんな経年変化を見せてくれるのかが楽しみな1品。
〈RIGHT〉
クラシカルな定番のロゴを配したサスペンダーは幅広のゴム製。刻印を施したレザーの質感や、ポップなフォントと落ち着いた配色のミスマッチが心ニクい。ウェストバンドに留めるクリップ式で、WESTOVEALLのデニムにはウェスト内側にループがつくので、そこにレザー部分を通して着けられる仕様。



ベルトがまだ普及していなかった1800年代、樵の作業着として一般的だったのがビブと呼ばれる胸当てがついたオーバーオール。そこに不便さを感じ、そのビブを腰の位置で切り落としたものがウエストオーバーオールと呼ばれるようになり、後のジーンズの原型となった。現代ではあらゆる人々のワードローブにあるデニムという衣服のルーツ。そんなストーリーこそが古着畑で育った大貫がこの言葉をブランド名に冠した理由であり、そこに込められたのは、万人のスタンダードになってほしいという彼の想いだ。

「自分たちが古着に触れてきたみたいに、30年後の人たちが"お、WESTOVERALLSのヴィンテージ出てきたんだ?"なんて話してたら面白いですよね。いつかそういう風になりたいっていう気持ちが、自分の中にはあるんです」。

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ウェストオーバーオールズのほぼすべてのアイテムにつくネームタグ。レーヨン生地に立体的な刺しゅうを施した、ヴィンテージライクな意匠だ。 




大貫 達正

1980年11月17日生まれ。
小学生の頃からヴィンテージ古着に興味を持ち、アメリカやイギリス、フランスの古着を中心に販売からバイヤー、ショップディレクションまで幅広くに携わり、国内の古着業界に10年間勤める。
2010年、自らのブランドMANUFACTURED BY SAILOR'S(マリン系バッグ、小物ブランド)を立ち上げる。
その後、セレクトショップやデザイン会社の企画ディレクションに多数参加し、
現在はフリーランスとしてHELLY HANSENのクリエイティブアドバイザーを務める他、HELLY HANSEN R.M.C、OLDMAN'S TAILOR、そしてWESTOVERALLSの企画ディレクションを手掛ける。



PHOTO : Yohei Miyamoto
TEXT : Rui Konno