Ten c
構想3年、製作2年。完成に5年を費やした究極のアウターとは?
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Ten c
構想3年、製作2年。完成に5年を費やした究極のアウターとは?

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「クオリティが高すぎる」「生地やディテールのこだわりが尋常じゃない」。〈Ten c〉を知る人は皆口を揃えて前のめり気味にこう話す。では実際どこがスゴいのか? ブランドのルーツから服作りのプロセスに至るまで徹底解剖します。

そもそも〈Ten c〉とは?

読み方は〈テンシー〉。〈ストーンアイランド〉で12年間チーフデザイナーを務めていたポール・ハーヴィーと、〈CPカンパニー〉のデザイナーだったアレッサンドロ・プンジェッティがタッグを組み、2010年にブランドをスタート......とまぁ細かい沿革は置いといて、ざっくり要約するなら『サイエンティストの申し子2人が作るハンパない服』って話。〈ストーンアイランド〉と〈CPカンパニー〉といえば、ともにマッシモ・オスティっていうメンズカジュアル界の革命児がイタリアで設立したブランド。軍モノのヴィンテージを徹底的に掘り下げて研究し、その機能性や素材感をいち早くカジュアルウエアに落とし込んだのが他でもないマッシモさん。科学者ばりの緻密なアプローチでガーメントダイを1970年代に世界で初めて発表したのもマッシモさんなのだ。

今となっては服づくりの基礎になっている軍モノのサンプリングや製品染めを誰よりも先におこなったってスゴくないか? そのMr.サイエンティストのもとでミリタリーのイロハと生地開発&染色のA to Zを習得した申し子2人が、「一生着られる服を作る」と一念発起して立ち上げたのが〈Ten c〉ってわけ。構想3年、製作2年、完成まで5年。って、オイオイ冗談だろ? と正直疑ってしまったけど、長い歳月を費やしたその"一生モンの服"を実際着たらもうヤバいのなんのって......。

まず、いきなり圧巻なのが素材。申し子2人がメインに据えたのは通称『OJJ』というファブリックで、ナイロンとポリエステルを超高密度でニット編みした日本製の特殊生地なんだけど、ハリ感があってとにかく滑らか。しばらく触っていたいぐらい気持ちいいシルキータッチなのだ。おまけに、風を完全にシャットアウトするし、雨もバシバシ弾くし、ちょっとした汚れなら拭けばサッとすぐ落ちてテック面もパーフェクト。加えて、デニムのように着続けるほどにいい感じのアタリができて経年変化も楽しめるっていうから文句のつけどころがない。さすが!と強く膝を打ったのも束の間、驚くのはまだ早かった。その高機能素材をイタリアに空輸し、ナイロン・ポリエステルの混紡生地を製品染めできる唯一の工場に持って行ってから染め上げるらしく、聞けば、130〜140度の高温で圧力をかけないとその『OJJ』は染まらないとか。って、ちょっと待てよ? 製品染めってことは縫製を終えてアウターの原型が出来上がってから後染めするわけで、でもそんな高温で染めたら生地は当然縮むわけで......って、まさかと思って確認したら、「縮率まですべて計算した上で染めています」との返答が。

マジか......。そんな驚愕と呆然の連続の末、いざ完成したアウターに袖を通したら、フィッティングの良さにもヤラレてしまった次第。そうだ、イタリアブランドだということをすっかり忘れていた。今季、クラシック回帰の流れでイタリアンクラシコが気になって本場サルトリアのジャケットをあれこれ試着したんだけど、そのとき皮膚レベルで体感したあのとてつもなくしっくりくる着心地と同じだ。ゆったりしたシルエットでもどこか洗練されていて、野暮ったさは微塵もなくスマートな印象。2人はサイエンティストでありながら、サルトリア・マインドも秘めていたのか。しかも、ラインナップのほとんどに陸・海・空軍のディテールが満載で、"1960年代後期のドイツのスノーケルパーカ"、"1951年の朝鮮戦争で米陸軍が採用していたフーデッドパーカ"などなど、ソースにしている元ネタ自体がマニアック過ぎてやけに男心をくすぐられる。完成まで5年っていうのも納得。逆に、ここまでの超大作をたった5年でよく仕上げたなぁと拍手を送りたいぐらいだ。

正直値は張るけど、"一生モン"ってのは確かだった。


ANORAK

定番で展開している『アノラック』はボディにナイロン・ポリエステル『OJJ』を使用し、1960年代のカナディアンアノラックをベースにリデザイン。使い勝手を考えてフロントをジップ仕様にし、ポケットをサイドに付けて都会的にアップデート。さらに、背面にはカナダのシューティングジャケットのディテールを取り入れて大容量のゲームポケットを配備。内側からでもポケットにアクセスできるのでバック要らずです。首回りには防風性を高めるチンストラップが付属し、別売りのライナーをつければ寒い日でもなんのその。着丈も程よく短いので、太めのパンツにも相性抜群です。 CC_FEATURE_TenC_01.jpg CC_FEATURE_TenC_02.jpg CC_FEATURE_TenC_03.jpg CC_FEATURE_TenC_04.jpg

PARKA

1951年の朝鮮戦争でUSアーミーが採用していたフィッシュテイルのフーデッドパーカをソースに、元々のダボっとしたシルエットをシェイプしてモダンなストンとした縦長フォルムにアレンジ。ただ、身幅やアームホールは極端に細くせず、着心地はあくまで定番的に長く愛用できるリラックスフィット。フードの作りはドイツ軍のミリタリージャケットからヒントを得てフード自体を少し小さくし、ワイヤーを内蔵することで思いのままにアレンジできるように仕上げています。襟には補強ステッチが両面に細かく施されていて、耐久性もばっちり。素材はこちらも『OJJ』を使用。 CC_FEATURE_TenC_05.jpg CC_FEATURE_TenC_06.jpg CC_FEATURE_TenC_07.jpg CC_FEATURE_TenC_08.jpg

CYCLONE PARKA

1960年代後期のドイツのスノーケルパーカから着想を得た『サイクロンパーカ』。オリジナルはラグランですが、あえてセットインスリーブにすることで、より縦長のシャープなシルエットに。バックのフィッシュテイルや大きめのフードも好バランスで、ウエストにはマチたっぷりの大きなフラップポケットが配され、そのサイドにはハンドウォーマーポケットが付属します。ジップを一番上まで閉じるとだいたい顔半分ぐらいまで覆うほどの高さになり、強風の日でもばっちり対応。ソリッドな見た目とは裏腹に普段使いで重宝するディテールが盛り込まれています。素材は『OJJ』。 CC_FEATURE_TenC_09.jpg CC_FEATURE_TenC_10.jpg CC_FEATURE_TenC_11.jpg CC_FEATURE_TenC_12.jpg

ARTIC DOWN PARKA

1960年代に採用されていたN3-AやN3-Bといった極寒地用フライトジャケットからインスピレーションを得た『アークティックダウンパーカ』。戦闘機のような狭いコックピットに乗るパイロットではなく、輸送機などのパイロットに向けのジャケットをイメージしていて、フードやポケット、ラグランスリーブの仕様はN3-AやN3-Bのディテールを踏襲。表地には撥水性の高いナイロン素材のマイクロファイバーシェルを使用し、さらに極寒の状況にも対応できるようライナーダウンを付けることができるようにデザインされています。刺繍で耐久性を増したフック式のフラップにも注目。 CC_FEATURE_TenC_13.jpg CC_FEATURE_TenC_14.jpg CC_FEATURE_TenC_15.jpg CC_FEATURE_TenC_16.jpg CC_FEATURE_TenC_17.jpg

PHOTOGRAPHER : Makoto Tanaka
TEXT : Kyosuke Nitta