SOMETHING'S BREWING
現在進行形のクラフトビール事情
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COVERCHORD FEATURE

SOMETHING'S BREWING
現在進行形のクラフトビール事情

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昨今のフード事情において、なにかと話題にあがるクラフトビール。音楽業界に数多くのインディーレーベルが存在するように、大手メーカーがリリースするビールとは異なる味わいがあるのがクラフトビールの魅力だ。 今回の COVERCHORD FEATURE ではカルチャー特集として、「志賀高原ビール」、「うしとらブルワリー」の代表者のインタビューに加え、注目のブルワリーをご紹介。クラフトビールのいまを追いかける。
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志賀高原ビール / 佐藤 栄吾氏


ー生きていく上でビールは不必要。だからこそ楽しんでつくらなきゃいけない。


「自分たちが飲みたいビール」。これが「志賀高原ビール」のコンセプトだ。製造しているのは、長野県の志賀高原にて創業し、200年以上の歴史をもつ玉村本店。このブランドの醸造責任者である佐藤栄吾さんは、大手証券会社に勤めたのち、アパレル企業に転職。そこに2年間在籍したあと、家業である酒屋に戻り、ビールづくりに挑むことになった。

「クラフトビールの定義なんてよくわからないけど、ぼくは作り手の顔が見えるというか、そういうことが大事だと思っています。決して効率的な商売ではないかもしれないけど、『人と違って面白い』とか『うまい』って言ってくれる人がいるならぼくはやりたい。そして、みんな同じように苦労してがんばっている人なら小さかろうが仲間だと思うし、情報は全然オープンにします」

佐藤さんがビールづくりをスタートさせたのは2004年のこと。玉村本店は元来、清酒をつくる酒屋だが、どうしてビールをつくろうと思ったのだろうか?

「当時は地ビールブームが苦しい時代で、これからビールをつくろうなんて人は他にいなかったんですよ。でも、ぼく自身ビールを飲むのが好きだし、大手のビールを飲む人口は減っていない。みんなビールづくりをやめているなら、どこかに使っていない醸造施設が余っているだろうし、やってみようかなと思ったんです」

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そのときに佐藤さんが目をつけたのがアメリカンスタイルのビールだった。和食、中華、洋食と、さまざまな料理が並ぶ多国籍な日本の食卓には、ホップの効いた香り高いビールが合う。それに佐藤さん自身も、そういったビールが好きだと教えてくれた。

「でも、"アメリカっぽい"では単なるコピーでしかない。できればそれとは違う、ここだからつくれるものができたらいいなって思って。もともとうちのエリアは昭和30年代まで日本で最大のホップの産地だったんですよ。だから少なくともホップの栽培には適しているし、シャレでもいいからちょっとやってみようかなと思ってホップをつくりはじめたんです。昔うちの酒造りによく来ていた人が20年くらいホップをつくっていたらしくて、その人に相談しながら。それに志賀高原は、山の雪解け水が岩に堰き止められて湧いて出る源泉があって、水道水でもおいしい水が飲めるんですよ。最近は水をいじる人が多いんだけど、せっかく地のものをつくるんでいじらずにその水を使ってます」

2005年からホップの栽培をはじめ、その収穫のときには知り合いのブルワーや友人を呼んで身内だけの収穫祭のようなものを行なったそうだ。それが後にビールと音楽の祭典「SNOW MONKEY BEER LIVE」へと発展することになる。

「収穫祭の話をビアフェスとかですると、『今度はアーティストを呼んで志賀ロックやろう!』みたいな冗談が飛び交うんです。『うちはたこ焼き屋やる!』とかそんな話をしてて。あるとき、そういうのを実際にやってみるのもいいかもしれないと思って。ビールが揃いましたといっても山の中だと人が来てくれるわけでもないし、音楽と一緒にやるならいいかもしれないな、と」

「志賀高原ビール」を扱っているお店には音楽関係のお客さんも多いらしく、「そういった繋がりにも縁を感じる」と嬉々とした表情で話す佐藤さん。ミュージシャンだけでなく、国内外問わずさまざまなクラフトビールのメーカーを招致して、その魅力を発信している。

「みんなライバルであると同時に仲間。ブルワー同士の情報交換も盛んだし、そういうカルチャーってあるじゃないですか。ぼくもそういうのを感じて、いろんな人に作り方を教えてもらったし。そういうのがある業界だと思いますよ」

CC_FEATURE_CRAFT_BEER_03.jpg 本気で遊ぶと同時に真摯にビールと向き合う佐藤さん。話を聞いていると、楽しみながらビールをつくっている様子が伝わってきて、そのポジティブなエネルギーがビールにも注がれているように感じる。最後に佐藤さんはこんなことを話してくれた。

「洋服もそうだと思うんですけど、ビールなんてなくても生きていけるじゃないですか。ただ生きていくだけならいらないんです。でも、いらないものにお金を払って飲んでもらうわけだから、『うまい』であったり『おもしろい』であったり、そこにはなにかしらの道義がなくてはならなくて。ぼくらみたいな小さなブランドは、そういった魅力がなくちゃいけない。だからこそ、それをするために自分も遊んでるっていう感じですね」


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うしとらブルワリー / 寺崎 晶王氏


ーそこには絶対に手を出しちゃダメだと思った(笑)


ビール好きのあいだで、"うしとら"という名前を聞いてピンとこない人物はいない。「ビアバー うしとら」はそれほど有名なお店だからだ。自分たちでつくる「うしとらブルワリー」のビールに加え、常時30種類以上のクラフトビールを毎夜グラスに注いでいる。

でも、そんな"うしとら"がもともとは西荻窪でスタートしたということを知っている人は少ないかもしれない。このお店の代表であり、現在「うしとらブルワリー」の責任者も務める寺崎晶王さんは、もともと他の飲食店で経験を積んだのちに独立。共同経営者である吉田伸右さんと一緒に前述の西荻窪で自身のお店をオープンさせた。


「正直、ビールじゃなきゃダメ、っていうわけではなかったんです。俺たちはお酒を飲むのが好きだから、飲み屋さんをやりたかった。でも、普通のバーをやったって、他のお店にかないっこない。当時、ビアバーっていうのは珍しかったし、他にやっている人がいなかったっていうだけなんです(笑)。でも、それは見当違いな話で、蓋を開けてみると先人たちがいっぱいいたんです。しかも、ビールの世界ってめちゃくちゃ奥深い。完全にリサーチ不足でしたね(笑)。でも、はじめたからにはしょうがない。必死に勉強しましたよ。性格上、掘るのが好きなので」

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開店当初はベルギービール全般を扱っていたうしとら。当時は瓶ビールだけのラインナップだったが、「クラフトビールを扱いたい」という想いから2006年に下北沢に移転し、現在の"樽オンリー"のスタイルに至る。いまとは違って当時はビールが下火の時代。そんなときを乗り越えて、いまでもたくさんのファンを持つうしとらだが、その秘訣はどんなところにあるんだろう?

「ビール好きではない人に向けて商売をしたからですかね。ビールが苦手っていう人ほど、クラフトビールを飲ませると、価値観が変わるんですよ。『あぁ、これなら飲める』って」

そんな寺崎さんが「うしとらブルワリー」という名でクラフトビールをつくるようになったのは2014年のこと。「そこには絶対手を出しちゃダメだって思ったんですけどね」と明るく笑いながら、事の顚末を教えてくれた。

「カナダ人の仲のいいブルワーが『日本でビールをつくりたい』って言うんですよ。飲みの席だったし、冗談だろうと思ってたんだけど、どうやらマジだったみたいで。それで中古の工場を買って免許も取得したんだけど、その間に気が変わっちゃったみたいなんですよね(苦笑)。でも、すでに船は海に出ちゃってるわけでしょう? だから自分たちでやるしかないなって(笑) 」

もともとビアバーを運営していたことが功を奏して、いろんな知人からビールづくりに関する知恵をもらい、試行錯誤を繰り返したという。そして自分の足で営業に廻り、できあがったビールを試してもらったそうだ。明るく気さくな寺崎さんらしいエピソードだ。

「俺は自分で配達もするんです。そうやってお客さんと直で話して、卸先のお店の雰囲気とか、そこでビールを飲んでいる人たちの顔を見る。たまに話しかけて『どうですか?』って聞いたりもします。そこで得たものを次のビールづくりに活かす。そうゆう泥臭いの、嫌いじゃないんです」

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「うしとらブルワリー」のビールの特徴といえば、定番のビールが存在しないこと。常に新しいビールを開発し、ビール好きたちの舌と喉を刺激している。

「あえてそうしてるんです。クラフトビールが好きな人って、他と違うものを飲みたいっていう人が多いから。コレクターたちの心をくすぐるような感じかな。そうすることでなによりも、自分たちが飽きないですからね」

最後に今後の目標について寺崎さんに質問を投げかけると、「ないない! これ以上大きくしたって、自分の首を絞めるようなもんだから」と再び笑う。

「でも、うちから若いブルワーの子が育って巣立っていってくれたらうれしいかな。『ビールをつくりたいです』って言ってくる若い子が多いんですよ。俺たちは寺崎と吉田の名前でビールを出すつもりはない。つくってくれた若いブルワーの名前で売っているんです。そうやって自分の作品を出したほうがモチベーションにもなるだろうし。『うしとらブルワリー』のブランドを使って、どんどん成長して、どんどん世に出ていってほしいですね。それくらいかな、目標といえば」

なにがあってもドンと構え、笑いながら明るく生きる。そういった寺崎さんの器量の大きさが、「うしとらブルワリー」と「ビアバー うしとら」を支えているのかもしれない。


PHOTOGRAPHER: Yuto Kudo
INTERVIEWER: Nobuhiro Tajima
TEXT: Yuichiro Tsuji




COVERCHORDがオススメする 日本の注目ブルワリー


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1. うしとらブルワリー / ケルシュ


下北沢にある老舗ビアバー"うしとら"が立ち上げた真面目に遊びを追求したブルワリー。
最大の特徴は定番を持たず毎回違うビールをつくり続けているところ。その野心的な試みに満ちたビールは飲むたびに驚きと感動を与えてくれる。

ケルシュ
ドイツのケルン地方でつくられているビールのスタイル。ホップの味が強めで苦みは少なく"スルスル"と飲みやすいのだが、麦の甘みを存分に味わえるビールに仕上がっている。

【BREWERY DATA】
うしとらブルワリー
栃木県下野市笹原142-3 Tel : 0285-39-7300
【SHOP DATA】
ビアバーうしとら壱号店
東京都世田谷区代田6-3-27 Tel : 03-3485-9090

2. Far Yeast Brewing / FINAL CUT SESSION ALE


ビール本来の多様性と豊かさをもう一度取り戻す為に東京発のオリジナリティ溢れるビールを世界中に発信し続けるブランド〈FAR YEAST BREWING〉。四種類の定番ビールである東京ホワイト、東京ブロンド、東京IPA、FINAL CUT SESSION ALEを中心に限定ビールやコラボレーションビールを定期的にリリースしている。

FINAL CUT SESSION ALE
モザイクホップをメインに"キレッキレ"に苦みを際立たせフルーティーな香りが特徴。ホップが効きつつもアルコール度数が低いので何杯でもごくごくと飲める仕上がりに。

【BREWERY DATA】
FAR YEAST BREWING醸造所
山梨県北都留郡小菅村4341
【SHOP DATA】
FAR YEAST TOKYO CRAFT BEER & BAO
東京都渋谷区渋谷2-6-8 Tel:03-6874-0373

3. 志賀高原ビール / INDIAN SUMMER SESSION


長野県志賀高原の麓に位置する 「自分たちが飲みたいビールつくる」をスローガンに掲げるブルワリー。世界的な評判も高く、アメリカのビール評価サイト"RATE BEER"では日本のベストブリュワリーとして毎年選ばれる程の実力を持つ。原材料である麦やホップを自家栽培するなど究極なビール作りを追求している。

INDIAN SUMMER SESSION
喉越しが良く、爽快!ドライでいてフルーティ!そしてホップの苦みが強いのも特徴。もともとは夏の農作業のためにつくられたと言われるスタイル"セゾン"をベースにホップの苦みを加えた個性ある独特な"癖のある"ビールに仕上がっている。

【BREWERY DATA】
志賀高原ビール
玉村本店 : 長野県下高井郡山ノ内町大字平隠1163 Tel : 0269-33-2155
【SHOP DATA】
THE FARMHOUSE
長野県下高井郡山ノ内町平穏1403 -2 (旧志賀山文庫) Tel : 0269-38-1630

4. 南信州ビール / アンバーエール


中央アルプス駒ヶ岳山麓に位置するマルスウイスキー工場に併設して造られたブルワリー。雪解け水を豊富に含んだ良質な水を使いビールをつくりあげる。長野県名産のリンゴを贅沢に使った"アップルホップ"もオススメの一つである。 アンバーエール
アンバーエールとはペールエールを濃くしたビール。カラメルモルトの香ばしいアロマとホップの苦みが絶妙にマッチした力強い味わいは何度でも飲みたくなるビール。

【BREWERY DATA】
南信州ビール 駒ヶ岳醸造所
長野県上伊那郡宮田村4752-31 Tel : 0265-85-5777
【SHOP DATA】
直営レストラン味わい工房
長野県駒ヶ根市赤穂759-447 Tel : 0265-81-7722 CC_FEATURE_CRAFT_BEER_08.jpg

5. 箕面ビール / スタウト


大阪箕面市に拠点を置きローカル(地元)を中心に一気に全国に広まったブルワリー。全てのビールにおいて原材料を厳選し材料に合わせたビールを毎年レシピを変えながら作り続けている。「クラフトだからそういう味も楽しめたら」という考えから、日本の四季(季節感)を大事にし夏には"桃"、冬には"柚子"を使用したビールを限定にてリリースしている。

STOUT
コーヒーやビターなチョコレートを感じさせる味わいが特徴で「黒いビールは苦手」という方にも是非飲んでもらいたい。ドライでいてスムースな後味は思わず「コレ良いね!」と驚きを味わえるビール。また海外のビールコンペでも3度金賞を受賞。

【BREWERY DATA】
箕面ビール
大阪府箕面市牧落3-14-18 Tel : 072-725-7234
【SHOP DATA】
MINOH BEER WAREHOUSE
大阪府箕面市牧落3-14-18 Tel 072-725-7234

6. ベアード・ブルーイング / ライジングサンペールエール


伊豆半島を拠点にビールへの深い愛情と"Celebrating Beer(ビールを祝福する)"をモットーにビールのある喜びを楽しむブルワリー。定番/限定を問わず共通する素材感と無垢な味わいから作り手の強い思い入れを感じるビールを数多く作り出している。

ライジングサンペールエール
"バランス"がこのビールを最も的確に表している。あらゆる物を邪魔しないペールエールの奥深さを改めて感じる事の出来るこのビールはまるで日本のクラフトビールの夜明けの様な存在感。

【BREWERY DATA】
ベアード・ブルーイング / ベアード・ブルワリーガーデン 修善寺
静岡県伊豆市大平1052-1 Tel : 0558-73-1225
【SHOP DATA】
ベアード・タップルーム沼津フィッシュマーケット
静岡県沼津市千本港町19-4 Tel : 055-963-2628

7. オラホビール / キャプテンクロウ


浅間山麓の豊富な湧き水と厳選された素材と共に醸造されるビールはとてもピュアで国内外において高い評価を得ている。土地の方言で"わたし達/わたし達の地域"を意味する"オラホ(OH! LA! HO!)"を冠する通りブルワリーの個性とこだわりを感じるビールをラインナップ。

CAPTAIN CROW
一口目から存分に広がるホップのキレと存在感がビターなモルトの味わいと絶妙なバランスで解け合う納得の飲み応え。喉を通る度に感じられる心地よさが何度でも杯を誘う。

【BREWERY DATA】
OH!LA!HO BEER
長野県東御市和3875番地 Tel:0268-64-0006
【SHOP DATA】
ブルワリー&レストラン オラホ
長野県東御市和3875番地 Tel:0268-64-0003

8. 伊勢角屋麦酒 / FORCE IPA


常にビールファンを唸らせる新鮮な驚きと笑顔の生まれるビールづくりに挑戦する。ビールの国際大会では数々の受賞履歴を持ち「伊勢から世界へ」を合い言葉に国外でも評価の高い実力あるブルワリー。

FORCE IPA
IPAらしからぬ淡色で透明感のある色合いと甘みのある口当たりとは裏腹に、後から追いかけてくる"ホッピー"な苦みがIPAらしさを十分に感じさせてくれる...ちょっと不思議で奥行きのある魅力的なビール。

【BREWERY DATA】
伊勢角屋麦酒
三重県伊勢市神久6丁目428  Tel:0596-21-3108
【SHOP DATA】
伊勢角屋麦酒 内宮店
伊勢市宇治今在家町東賀集落34 Tel : 0596-23-8773 CC_FEATURE_CRAFT_BEER_09.jpg

Enjoy a beer with...

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PHOTOGRAPHER: Yuto Kudo
TEXT: Nobuhiro Tajima