nonnative × Rainbow Disco Club
Celebrating 10 Years of RDC
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nonnative × Rainbow Disco Club
Celebrating 10 Years of RDC

今年で10周年という節目を迎えるダンスミュージックフェスティバル〈Rainbow Disco Club〉と〈nonnative〉がタッグを組み、Tシャツ+2CDセットのスペシャルアイテムをリリース。 CDは〈Rainbow Disco Club〉レギュラーメンバーとも言える"KUNIYUKI TAKAHASHI"、アムステルダムのレコードレーベル〈Rush Hour〉の創設者"ANTAL"の2名が手がけるスペシャルミックス。

今回は10周年を記念して、テクノの専門誌「ele-king」の創刊者としても知られる音楽ライター・野田努氏が、主催者・ツチヤマサヒロ氏に〈Rainbow Disco Club〉ついて話を聞いた。
海を背にバスで急な坂を登ってしばらくいって降りると、すぐ入口がある。なかに入って歩いていくと両側には売店が並んでいる。そして、坂の下方に新緑にかこまれたステージとフロアが見える。芝生の坂を下りていくと途中にハンモックが並んでいる。遠くにあるスピーカーはDJがかけている、あたたかいダンス・ミュージックを鳴らしている。その音楽は、たったいまこの場所では悪いことが起こらずに、集まった人たちが平和な気持ちを抱いたまま過ごせるようにサポートする。やって来た人たちは、坂の上からのその光景、そのヴァイブレーション、そのピースなアトモスフィアを一瞬に理解し、自分がいまその場にいることを嬉しく思う。

 RAINBOW DISCO CLUB(RDC)には、ダンス・ミュージックが持つ最良のエネルギーがある。あなたが音楽に集中して踊っていようと芝生に寝転がって誰かと喋っていようと、そよ風に吹かれながらハンモッグでうたた寝をしていようと、子どもたちといっしょにキッズスペースで遊んでいようと、それはすべてあなたの自由であり、その自由が素晴らしい自由であることを感じられる場所、それがRDCである。

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 「公園みたいな雰囲気は大事にしている」と、今回で10周年を迎えるこの野外フェスティヴァルを主催するツチヤマサヒロは言う。たしかに、「公園みたいな雰囲気」という言葉はRDCの個性をよく言い表している。公園では、みんな勝手に、それぞれがそれぞれの楽しみ方をしている。自由がある。
 とはいえ、公園とRDCが違うのは音楽だ。公園には音楽はないが、RDCには音楽がある。しかも、その音楽はそれなりの音楽通が好む音楽だ。ぼくが知人にRDCを勧められたのも、「とにかく音楽が良い」という理由からだった。


 「音楽が良い」──この言葉はポストモダニストに溢れる現代では死語かもしれない。が、RDCでかかる音楽の多くは、ソウルやファンクという伝統に根ざしたもので、愛の籠もった、人びとを正しい道に導くであろうと思われる音楽だ。ジャズやブルースの時代から受け継がれてきたエッセンスはエレクトロニック・ミュージックにおいても受け継がれているわけだが、それを「良い音楽」と呼べるのであれば、ダンス・ミュージックとはバカ騒ぎをする音楽ではあるが、同時に内省的な音楽でもあり、その両方を持っている音楽を「良い音楽」と定義するなら、あるいは、都会の騒々しい喧噪や不安に晒されている毎日から解放させて精神を若返らせる音楽を「良い音楽」と考えるなら、RDCでかかる音楽はすべて「良い音楽」と言えよう。
 「良い音楽」とは必ずしもコマーシャルではないし、人気のポップスターがやっていることがそうだとは限らない。RDCに出演するアーティストは、ある程度音楽を聴き込んでいないと出会わない人たちだし、かかっている音楽の多くはメジャーのレコード会社が流通している音楽ではない。その代わりに倹約してでもレコードを買っているようなコアな音楽ファンが好む音楽がかかっている。

 「単純に自分が好きだっていうのもあるんですけど、そこは拘っているし、戦ってもいます(笑)」とツチヤは言うが、たしかこれはいまの日本の音楽シーンにおける「たたかい」だろう。ただ、彼はそこをある程度クリアしている。なぜなら、RDCを特徴付けているひとつは家族連れの多さであり、要するに、RDCは音楽オタクが腕を組みながらあーだこーだ言うようなフェスではないということだ。ツチヤはこう続ける。「(多くのダンス・ミュージックは)感覚的な音楽で、強制力がない。これほど入口の敷居が低い音楽はないと思います。じつはマニアックではないんですよ」それはその通りで、だからこそ21世紀の現代では世界中でこうしたダンス・ミュージックのイベントが、もっとカジュアルに存在し、増え続けている。

   まあ、しかしそうは言ってもたしかにRDCのはじまりはマニアックだった。そもそもは働きながら、最初は趣味としてはじめたことだった。自分が好きな音楽のパーティを都内のクラブやレストランなどで友人とやっていたツチヤは、2010年に1000人規模のパーティを晴海埠頭にある特設ステージで画策する。大好きだったDJハーヴィーを呼べるということになって、大きめのパーティをやろうと決意したのがきっかけだった。名前は会場から見えるレインボーブリッジに由来する。  大方の予想を覆して、2010年5月2日の日曜日の午前10時からはじまったRDCの一回目には、4000人以上の人が押し寄せた。「リストバンドが足りなくなったほどで、すごい問題だらけでした」とツチヤは回想する。「トイレも足りない、飲み物も食べ物も足りない、飲み物で並んでいるお客さんからものがとんできてもおかしくないくらいでした。でも、大きなトラブルもなかったんです」  そう、そんなガタガタの状況だったのに、大きなトラブルがなかった。「いままでもそうだけど、お客さんに恵まれていると思います」と彼は付け加える。つまり、良い音楽が良いオーディエンスを呼ぶということが、あながちファンタジーではないことをRDCは計らずとも証明したことになる。「なんでこんなに人が来たのかわからないくらいでした。すごく嬉しかったし、自分たちがやりたいことが間違ってなかったっていう気持ちになれましたね」

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 今年で10年目を迎えるRDCだが、すべての野外フェスティヴァルがそうであるように、順風満帆なわけではなかった。試練は早くも2年目の2011年にやってきた。東日本大震災の影響で余儀なく中止、その翌年は日本のGWを襲った爆弾低気圧による台風のため中止、準備をしながらも2年連続で中止に追い込まれたことは、普通であれば心も折れて、その翌年のことまで考えないだろう。ところがツチヤは、2013年こそやるんだという強い思いを持ち続けた。そんなわけで、2013年5月5日の日曜日、午前10時から夜の20時にかけて、会場は晴海客船ターミナル臨港広場特設ステージ(そして同日に渋谷のWOMBとSeco)にてRDCは甦ったのだった。

 結局のところ、この晴海の会場のRDCは、ツチヤがもっとも影響を受けたアーティストのひとりに挙げるムーディーマンが出演したその翌年2014年の開催が最後となった。東京オリンピックが決まり、同所は選手村になるからという理由で今後は使えないと言われていた。新しい場所を確保しなければ続けられない。「だから、新しい場所をひたすら走り回って探しました(笑)。車で、キャンプ場とかいろんな場所を」ツチヤは言う。
 「で、いまのあの場所(伊豆稲取)を見つけたとき、一瞬ですべてが見えたんですよね。見た瞬間にステージの位置も決まっていた。フェスの光景が見えたんです。ふだんはクロスカントリーコース、走るコースなんです。だから大学生とかよく走っています。近所の人に誰が管理しているのか訊いたらすぐに教えてくれて、早速、管理している行政に問い合わせたら、とても好意的に受け止めてくれました。親切で、協力的で、いまも駅前の案内とか、サポートしてくれます」

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 伊豆は、海と山で成り立っている。稲取には漁港があり、その背後に山がある。その山の中腹の東伊豆クロスカントリーコースにて、2015年からはRDCは再出発した。
 「やりたいことはいまの場所になってからのほうができています」とツチヤは言う。「音楽を聴くだけではなく、視覚的な要素、それは自然のなかであったり、晴れていたらその日の青空だったり、風であったり、そういうものがすべていっしょになって感じられますからね」
 日本においてもっとも心地よい季節といえば初夏、4月末から5月の梅雨に入るまでの季節。昔から温暖な観光地として栄えた伊豆の初夏は、最高に心地よい。美しい新緑と青々とした海原。そこは漁業の拠点にもなっている。RDCにはいろんな売店があるが、そのなかには稲取で獲れた魚が食べられるテントもある。3日間の野外フェスなのでプチキャンプも楽しめるし、若いオーディエンスに混じって子どもたちの笑顔がたくさん見れる。広いキッズスペースの充実度はRDCの売りのひとつだ。子どもたちが退屈しないようにたくさんの遊び道具とたくさんの絵本まであるのだ。
 小さな子どもたちが混じっていると、ただそれだけで場の雰囲気はよくなる。それこそ休日の、良く晴れた昼下がりの公園が良い例だ。しかし繰り返すようだが、RDCでかかっている音楽は、幼稚園でかかっているような子ども向けの音楽ではないし、音楽の追求者たちが好む部類の音楽だ。



 「イギリスのHoughton Festivalのラインアップを見るとたまらないですね。出演者が素晴らしいんです。あれはぼくのなかで理想です。アンドリュー・ウェザオールのようなベテラン、若手からディスコ勢もいるし、バランスが良いし、間口も広い。あれはすごいです」

 ダンス・ミュージックとはアンダーグラウンドであっても大衆的なものだとツチヤは主張する。「知識がなくても入っていける、感覚的な音楽だし、これほど入口の敷居が低い音楽はないと思います。じつはマニアックではないんですよ」
 「RDCはとりあえず野外フェスと呼ばれていますけど、精神性はレイヴ・カルチャーだと思っています。心地よく、解放感がありつつハードな精神もある、そういうバランス感覚が重要だと思います。優しくて、逞しいみたいな。出演するDJの方々も、ぼくが何も言ってないのに、優しい側面とハードな側面の両方を出してくれるんですよね」
 レイヴ・カルチャーというのはよく「a way of life(生き方)」だと言われる。自分たちが心地よく生きていくためにはどうしたらいいのかを最終的には考えざるをえない。ただそこで消費される音楽ではないのだ。そう、それは「consume(消費)」ではなく「experience(体験)」である。「誰でも感じることができるし、自分で感じて自分で考えて下さいって音楽です」とツチヤが言うように。

 体験とは、何が起こるかわからないことだ。自然のなかでは必ずしも自分が思うようにはいかない。GWは平均的には晴れが多い季節だが、雨が降ることだってある。「逆に、雨に打たれながら遊ぶっていうのはなかなかないと思うんですよね。もちろんテントに戻る人や宿泊施設に帰ってしまう人はいるだろうけど、雨のなかで残った人たちには、ふだんにはない、別次元の経験が待っているんじゃないかと思います(笑)。言うなればレコードのB面が見えるというか、それはそれで貴重な経験だと思います。もちろん晴れてくれることを願っていますが」
 RDCは着実にファンを増やしているようだ。ほとんどが口コミによって、10年かけて広がってきている。そこはツチヤも手応えを感じている。「環境の良さと鳴っている音楽の良さが合致しているという評価はよくしてもらってますね。もちろん個別のアーティストのファンの方もいますが、もっと、ぼくらのイベント自体を評価してくれるお客さんが増えてきていますね。RAINBOW DISCO CLUB が好きって言ってくれる人がいるのは嬉しいです」

 「でも、まだぜんぜん足りないと思っています」とツチヤは自嘲気味に話す。「自分のなかでは理想に対して半分もいけてないです。デイイベントなんで、未成年も入れるし、保護者同伴になりますが、無料で入れます。もっともっと若いうちからエレクトロニック・ミュージックの面白さを知って欲しいんです」
 これは控え目というより、RDCのヴィジョンはまだまだたくさんあることを意味している。「たとえば、いつかはバンド演奏を取り入れたいし、もっと秘密の仕掛けを作りたいです(笑)。宝探し的っていうか、そういうのがひっそりあったり、まだまだやりたいことがあるんです。規模を大きくするつもりはないんですけど、間口は少しずつ広げて、いろいろやってみたいです」  「いずれにせよ」とツチヤは笑いながら、しかし真剣な眼差しで続ける。「ぜんぜんまだまだなんですよ」
 そんなことを言いながら今年で10年目、第一回目に登場した、DJハーヴィーも出演する。ほかにも相変わらず妥協無しのメンツが揃っている。最高の音楽を約束してくれる名前が連なっていて、素晴らしい場所──山と海と空だけがある場所で素晴らしい音楽をプレイしてくれる。それは、音楽ファンで良かったと思える3日間である。

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野田 努(ele-king)
ライター/編集者。主著に『ブラック・マシン・ミュージック』、『ジャンク・ファンク・パンク』、『ロッカーズ・ノー・クラッカーズ』、『もしもパンクがなかったら』。共著に、石野卓球との『テクノボン』、三田格との『TECHNO definititive 1963-2013』など。『remix』編集長を経て、現在、オンライン・マガジン『ele-king』編集長。



Rainbow Disco Club 2019

4月27日(土)・28日(日)・29日(月)
東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ
静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3348

STAGE6 (3日通し券) 20,000円
キャンプ券 4,000円
駐車券 3,000円

Rainbow Disco Club https://www.rainbowdiscoclub.com/
BANANA BUS TOUR https://bnana.jp/products/rdc19-bustour/



nonnative × Rainbow Disco Club

〈nonnative〉定番"DWELLER TEE"の"HEAVY WEIGHT"をボディに使用した半袖・長袖のTシャツ。
バックプリントには、〈Rainbow Disco Club〉初期に使われていたロゴグラフィックを、10周年ということでリバイバルして使用した。

さらに〈Rainbow Disco Club〉と所縁のあるアーティスト2名によるエクスクルーシブCDが付属。 1枚目は、〈Rainbow Disco Club〉レギュラーゲストと言っても過言では無い"KUNIYUKI TAKAHASHI"による、"Double Improvisation Recording"と題された1トラック約60分の内容。"Double Improvisation Recording = 二重即興録音"という言葉の通り、即興演奏の上からエフェクトなどを加えて録音するという、"KUNIYUKI TAKAHASHI"の職人技が光る、非常に手の込んだ内容。
2枚目は、不動の人気を誇るアムステルダムのレコードレーベル〈Rush Hour〉の創設者"ANTAL"によるMIX CD。"ANTAL"が〈Rainbow Disco Club〉出演の際によく使用していた曲や、彼自身の思い入れが深い曲などをふんだんに使った内容となっており、正に"BEST OF Rainbow Disco Club"。こちらも極上の一枚に仕上がっている。

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DWELLER L/S TEE - COTTON JERSEY HEAVY WEIGHT
for Rainbow Disco Club + 2CD SET
Price_¥12,000
Color_WHITE, BLACK


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DWELLER S/S TEE - COTTON JERSEY HEAVY WEIGHT
for Rainbow Disco Club + 2CD SET
Price_¥10,500
Color_WHITE, BLACK


Photograph_Masanori Naruse, Jiro Ken, Kaz Kimishita
Text_Tsutomu Noda
Translation_ Yuko Caroline Omura