Text
Shunsuke Ishikawa Interview
CC_FEATURE_TEXT_INTERVIEW_00_top.jpg

COVERCHORD FEATURE

Text
Shunsuke Ishikawa Interview

これまで〈marka〉や〈MARKAWARE〉を手がけてきたデザイナー、石川俊介氏による新しいブランドが今秋よりスタートする。
名前は〈Text(テクスト)〉。「Farm to Closet(農場からクローゼットへ)」というコンセプトが意味するのは、サスティナブルなファッション。石川氏自ら原材料探しをおこない、工場などの生産背景はもちろん、着る人の手に渡った後のことまでも考えたものづくりをしている。
「自分の服づくりにおいて、ネガティブな要素をなくしたい」とは石川氏の言葉。その真意を探るべく、アトリエを訪ねた。
CC_FEATURE_TEXT_INTERVIEW_01.jpg


ファッションの世界にはまだそれができていないと気付いた

ー新しいブランドである〈Text〉をスタートさせた経緯を教えてください。

今年で服づくりをはじめて丸18年経ちました。〈marka〉を立ち上げた当初から日本でものづくりをし続けていて、その中で工場と直接やりとりをするというのが基本的な姿勢でした。とはいえ、やっていく中で気になることが出てきたんです。

2012年から13年にかけて、コーヒーとチョコレートのお店を中目黒でやっていたんですが、当時にはサードウェーブの流れもあって、トレーサビリティやフェアトレードという考えが食の世界には行き渡っていた。どこの農園で採れた豆やカカオなのか、きちんと生産者の顔がわかる。それを自分の服に置き換えたときに、ファッションの世界ではまだまだそれができていないと気付いたんです。

実際にぼくらはコットンやウールなどの天然素材を中心に服をつくっていましたが、そこにはコーヒーやチョコレートと同じ世界が広がっているんじゃないかと思ったんです。

ーインドへ行ってコットンの生産者に会いに行ったり、パタゴニア地域では羊、ペルーではおなじくコットンやアルパカを育てている人たちのもとへと向かわれたと聞きました。そしてモンゴルではカシミヤもご覧になられたんですよね。それは、そうした理由からなんですね。

最初は話を聞きにいくだけでもいいと思っていたんです。いま買っている原料を育てている人たちに会って、その人たちの暮らしを見たかった。自分の目で見て、耳で聞かないと、本当にいいものなのかわかりませんから。そして今は自分で原料を見つけてきて、輸入しています。

ー当時から〈MARKAWARE〉や〈marka〉では、オーガニックのコットンを使ったり、下げ札に工場の名前をプリントしたりするなどトレーサビリティには積極的に取り組んでいましたよね。

そうですね。ただ、同じブランドのなかでそうした取り組みを行っても、なかなか伝わりづらいんです。〈MARKAWARE〉や〈marka〉には既存のお客さまがいらっしゃって、各々が抱くブランドイメージがあると思うし、枠を超えて伝えることはできない。そのためには新しいブランドをはじめた方がいいんじゃないかと思って〈Text〉をつくったんです。

CC_FEATURE_TEXT_INTERVIEW


ひとつひとつの選択に意味を見出すことが大事

ー〈Text〉では「サスティナブル」というキーワードを掲げて服づくりをおこなっています。そもそも「サスティナブル」とはどんな意味を持っているのでしょうか?

サスティナブルには国連が定めた「SUSTINABLE DEVELOPMENT GOALs(SDGs)」という基準があって、そのなかに環境や人権、平和的な解決や、産業に関するものなど、たくさんの項目があるんです。みんなでそれを接続可能に成長させていきましょう、というのが「SDGs」の考え方。

間違えられやすいのが、サスティナブルはエコやロハスと同意義に捉えられがちなんです。SDGsの項目を見ればわかりますが、エコやロハスはサスティナブルの概念の一部なんです。

最初はぼくもエコ的な観点からサスティナブルな洋服づくりに入ったんですが、学んでいくうちに一緒に仕事をする人たち、つまり原材料の生産者や、工場の方々がちゃんと生活をできるような服づくりという<マーカ>設立当初からの理想と一つになって考えるようになりました。ようは、ものづくりをする最初の農家から、最後の工場さんに至るまでみんなが生活をしていけて、ポジティブな流れの中で服が仕上がるのが理想だとずっと思ってるんです。

ー具体的に〈Text〉でおこなっているサスティナブルとは、どんな活動なのでしょうか?

原材料としていいものを使って上質な生地をつくりたいというのはもちろんですが、それに加えて農業方法がサスティナブルなほうがいいし、そこで暮らす人々の生活を支えて向上させるものがいい。原料はそういう観点で選んでいます。

たとえばペルーのアルパカを育てる人たちは標高4000メートルの場所に住んでいます。そこでないとアルパカが育たないからです。その場所で他にできることといえば、唯一、銅鉱山があるくらい。街へ降りていけば良いアルパカは育たないし、教育を受けていないので住む場所はスラムのような場所になってしまいます。それは新たな貧困層を増やすだけです。だから、ぼくらが彼らからアルパカの毛を買うことは非常に意味があることだし、その毛で優れた生地を織ることができて、その生地がぼくにアイデアをくれます。

そうした具合にひとつひとつの選択に意味を見出すことが大事だし、それを伝えていくことでサスティナブルに繋がっていくんじゃないかと。自分がつくる服からネガティブな要素を限りなく無くしたいんです。

どうしてファッションでそれをやらなければいけないのか。ファッションなんて関係ないって思う人が多いと思うんですが、ファッション産業はあらゆる産業のなかで2番目に環境に悪影響を与えているんです。水の大量消費や、化学薬品の使用、農業で灌漑することで土地を痩せさせたりとか、すごく環境破壊をしているんです。

ーファストファッションの流行によって大量の売れ残りが廃棄されるというニュースを耳にしたことがあります。

それもそうですし、あとは人権問題もあります。ファッション産業は現代における奴隷リスクが全産業の中で二番目に高い産業でもあるんです。低賃金、人身売買、長時間労働など、人権においても悪影響を与えている。つまり、地球や人々から搾取によって成り立っている。そういった実情を変えたいという気持ちがあります。それが社会貢献に繋がっていくことっていうのは感激することだし、社会に対するいまの世の中に対するメッセージというのもあるので。


反体制的な考えが自分の中にある

ーそうした気概はどこからやってくるんですか?

10代の頃にぼくらはパンクに憧れて、中高時代はバンドをやったりしながら、その源流探しもしていました。当時は80年代でバブルがちょうど盛り上がるとき。カウンターカルチャーの流れがあったし、世の中に対する左的な思想もあった時代で、言論人はほぼ左寄りだったりとか、哲学的な部分でもポストモダンの流れが強かったりとか、そういう時代背景で若い時代を過ごしました。だから"三つ子の魂百まで"とは言わないけど、どこか体制に対する反抗心があるんです。

バンドをやめてたあとは大学に入って夜に遊びに行くことが多くなって、ちょうどクラブっていうものが日本に入ってきて、そこで遊んでるときの周りの連中も基本的に反体制的な人間でした。

そこから日本でも今の様なストリートカルチャーが生まれて、当時はすごく少数でした。いまはそれがメジャーになって、体制的なものに飲み込まれて、反体制的な考えが少なくなってしまっているなかで自分の中ではまだその火が灯っているんです。

ーそれで、さっき仰っていたコーヒーやチョコレートで気づかされたと。

服でそれをやろうと思ったんです。サードウェーブコーヒーもビーントゥバーもカウンターカルチャーをベースにしていると感じたので。

ーこれまでデザインしてきた服とは、デザイン面で違いはあるんですか?

少しずつ変えていこうと思ってます。というのも、サスティナブルを実現する上ではジェンダーレスというのもひとつのキーワードになるので、性別も関係なく着られる服として発表していけば、伝えられることも大きくなると思うんです。それもあるのでシンプルな洋服をベースにしながら、ちょっとしたギミックや遊びでデザインを入れるようにしています。

ー具体的にいうとどういうことですか?

たとえばいまぼくが着ているシャツは後ろを前にして着られたりとか、コートもそうやって着られるようにしています。そうしたちょっとした遊びですね。

CC_FEATURE_TEXT_INTERVIEW

ファッションは楽しいものでなければならない

ーサスティナブルの過程においては、〈Text〉の服が消費者に渡ったあとのことも大事だと思うんですが、そこへはどんなことを考えていますか?

お客さんに買ってもらって終わりとは考えていません。先ほど仰っていたように、ファストファッションの課題は大量に消費されて、大量に捨てられるということ。採った資源をなるべく長く使ってゴミにしない、それがサスティナブルにおいては大事なことです。そのためには、10年、20年着られるデザインであるべきだし、クオリティの高いものづくりをおこなわなければならないし、そのためのメンテナンスをお客さんに伝えることも必要です。

そうして品質のいいものをつくれば、お客さんがネットオークションやブランド古着のお店で売ることができますよね。そうした中古市場でも価値のあるものづくりをしたいと思っています。そうすることで、飽きたときに新しい服を買うための原資になるし、次の人が同じ服で喜んでくれる。こんなにうれしいことは服をつくっててないと思うんで。最終的にはぼくらがきちんと回収してアップサイクルすることも検討しています。

ーまだワンシーズン目がはじまったばかりですが、最後に今後のことについてどんなことを考えているか教えてください。

やりたいことがたくさんありすぎるのですが、パッと思い浮かぶことだと、直接の契約農家をつくりたいと思ってます。たとえばコットンを作る農家だったら、ひとつの集落と契約を続けて、そこに対する支援をしながらコットンを育てるというモデルケースをつくってみたいですね。

あとはひとりでも多くの人の意識を変えたいというのもあるし、いままでと同じではダメなんだということに気づいてほしい。それを続けた結果が悲惨な現状を生んでいるということを知らないといけない。とはいえ、服は楽しいものでなくてはなりません。

そういう意味では、ファッションでサスティナブルな取り組みをおこなうことは最大の進化だと思ってます。いまは新しいファッションが生まれない時代で、たまにユニークなデザイナーがでてきて面白いトピックを提供してくれますが、どのトレンドを見てもどこか懐かしさを覚えます。でもそこにサスティナブルな観点を取り入れることは、ファッションの進化だと思う。

ー〈Text〉の服を着ることでたくさんの人たちのサポートになりますね。

いま、世界中のビジネスリーダーたちがサスティナブルと経営を組み合わせてビジネスを進化させようとしているし、デザイナーとしては、サスティナブルで服を進化させることが大事なんじゃないかなと思っています。

CC_FEATURE_TEXT_INTERVIEW




石川俊介
1969年、兵庫県出身。2003年に〈marka〉をスタート。2009年春夏シーズンに〈MARKAWARE〉を発表し2ラインでブランドを展開。服作りにおける工程をすべて日本国内でおこなう。2019年秋冬よりサスティナブルなファッションを目指すブランド〈Text〉をローンチした。


Photograph_Shinji Serizawa
Text_Yuichiro Tsuji