KIKAI × PORTER
日常から秘境まで - "URBEX-1"ができるまで
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COVERCHORD EXCLUSIVE

KIKAI × PORTER
日常から秘境まで - "URBEX-1"ができるまで

心を揺さぶる風景に出会ったとき。誰かに見せたい光景を目の当たりにしたとき。そんな状況下で誰もが無意識にスマホを構える昨今では、写真を撮るというのはもはや専門的な技術ではなくなった。趣味としてのカメラだって、昔の人から見たらぐっと身近になったことだろう。
だけど、そのカメラを持ち運ぶためのバッグはと言えば、まだまだ日常との隔たりが小さくない。写真家として世界各地を巡る中で、常々そんな違和感を抱いていた佐藤健寿さんが〈PORTER〉と一緒に考えたバッグは、人とカメラと旅との関係を、どんな風に変えていくのだろうか。
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二極化していたカメラバッグ事情
その中間の"ちょうどいい"を求めて


「120ヶ国くらいまでは数えてたんですけど、それ以降はわからなくなっちゃいました。多分、130か、140くらいだと思います」。
これまでに訪れた国の数を尋ねると、佐藤健寿さんは事もなげにそう答える。"奇界"と形容する異端の景色や場所を探し、実際に足を運び続ける彼だけに、その装備にも特殊な機材が散見するのかと思いきや、実際はその真逆だ。

「ほとんどが普段から東京の街中で使っているものばかりです。単純に面倒だということもありますけど、日頃から使ってるものが一番馴染むじゃないですか。例えば靴でも、海外に行っていつもと違うものを履いてみたら足に合わなかったりとかっていうことは起こりうるから。だから日本にいる間は製品テストみたいな感覚で、そのまま海外に行ってヘビーデューティな使い方ができるものが良いなと思っています。ダナーライトなんかもそうだし、今着てるシャツも、東京でもアフリカでも着てますし」。

そうした旅支度観を持つ佐藤さんが、長らく不満を抱いていたのがバッグだ。大事な機材を護るためにこれまでに様々なカメラバッグを使ってきたが、どれも疑問や不満がチラつくものばかりだったそう。
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「カメラバッグって二極的なんですよね。ひとつは、いかにも家電屋さんで売ってる感じのカメラバッグ。ガチガチに緩衝材が入ってオーガナイズする機能性重視のもので、保護力は高いけど、柔軟性がないもの。もうひとつは柔軟性・見た目重視で、詰め込みは利くけど、機材を保護する力が弱いカジュアルなもの。大体がそのどちらかで。だけど僕の理想はその中間だったんです。旅に出る時はトラベルバッグとして使えて、現地ではカメラバッグとしても使える。そして日常生活の中では普通のバッグとして違和感なく使えるようなもの。そんなバッグが常々欲しいと思ってたんです」。
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縁あって、カバン制作の雄、ポーターとともにそうしたイメージを具現化できた結果が、"URBEX-1(アーベックス・ワン)"というショルダーバッグというワケだ。このモデル名は都市探検を意味するアーバンエクスプロレーションという言葉に由来する造語で、東京都内や各国の都市を渡り歩いてきた、佐藤さんの視点がその名にも垣間見られる。素材は、ミルスペックの1680デニールのコーデュラナイロンというタフなもの。しかし、耐久性もさることながら、外装の最大の特徴はその拡張性と柔軟性にあるという。
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単独使用可能なインナーバッグと
最大3倍に拡張するアウターバッグ


「今回の重要な機能がコンプレッション・ベルトです。ベルトでマチの幅が変えられて、小さくも大きくもできる。ただデカけりゃ良いというワケではないので、最大マチをどこまで広げるか、何度も話し合いました。最小だと普通の通勤や通学で使っても違和感のないブリーフケースくらい。最大サイズにすると、3〜4倍くらいに拡張して、インナーバッグを入れた上でもさらにもう一台、その横にレンズ付きの一眼レフが収まるくらいの余裕を持たせています。バッグ全体の重量にも当然こだわっていて、試作品ができる度に素材や構成を変えて、機能性を最大限維持しつつも、理想の重さに収めることができたんです」。
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KIKAI × PORTER URBEX-1 TRAVEL SHOULDER BAG

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本体の背面にはA4サイズが収まるポケットがふたつ。ひとつは底面がジップで開閉するループポケットになっており、移動時にはキャリーバッグのハンドルに通して固定できるようになっている。機内の荷物棚への出し入れを容易にするサイドグリップを備え、さらに市販のレンズポーチなどを取り付けて自由にカバンを拡張するためのアクセサリー用ループを設けているのもポイントだ。

 「カメラバッグはキャリーバッグ用のループが付いているものが意外と少ないんです。旅行に行く時はこれがあるかないかで全然使い勝手が違う。またループを使わない場合はジップを閉じればそのまま雑誌や書類が収まるポケットになります。こうした書類ポケットも実はカメラバッグにはあまりなくて、旅先で困ることがあるんです」

フラップを開いて内側を覗くと、そこには外装とは異なる高密度のナイロンでできた別の収納が。〈PORTER〉ではお馴染みのタンカーシリーズなどに使われている素材で、中にはクッション性のあるパッドが入っている。これが、カメラやレンズ保護の要となる機構だ。この保護材も開発当初はかなり肉厚だったそうだが、実地試験を経て、緩衝性と使いやすさのバランスが良い今の厚みにたどり着いた。実はこの収納部は本体から独立する設計で、ストラップも付いているので旅先では単体使いが出来るというシロモノ。
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KIKAI × PORTER URBEX-1 INNER CAMERA BAG


「ちょっと街を歩いて撮影したいときには大袈裟なカバンは要らないですし、このインナーバッグだけでもミラーレスのボディ1つとレンズ3~4本程度は収まるので、十分だと思います。アウターは拡張性にこだわって徹底的に作り込んだ分、インナーは必要最低限、カメラバッグとしてはミニマルです。とにかく軽量ですが、重いものを入れるのでベルトの太さにはこだわり、底面にはナイロンのベルトも付いていて、軽い三脚ならば固定することもできます。仕切り板を自由に動かせば財布、携帯、ペットボトルなど色々詰め込んでも結構入るし、パッドの厚みも"程よさ"を追求したので、カメラバッグとして使わなくても便利だと思います」。
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コブラバックル+フィドロック
PCスリーブ、キャリーバッグループと多彩なポケット


インナーバッグ付きのカメラバッグはこれまでにもあったが、カメラ本体やレンズをしまうとすぐに数キロになるにも関わらず、ストラップは細く、実用性の低いものが多い。そこで今作では肩への食い込みの痛みや不安定さを解消するため、インナーバッグも一般的なカメラストラップ並みのに太さを持たせている所にも注目したい。本体のストラップには登山やミリタリーでも使われる頑丈なコブラバックル(耐荷重1トン以上)を設けているのも大きな特徴。これは例えば狭い機内や中身が重いときでも簡単にカバンを着脱でき、真冬にダウンなどを着ているときにもカバンを無理やり持ち上げることなく着脱できるのでかなり快適だ。

「コブラバックルのサイズ調整機能を使って、メッセンジャーバッグのように体にカバンを近づけて使うこともできるし、ショルダーバッグのように離して使うこともできます。ベルトの着脱が自由なので、柵などにかけたり、混雑しているバスや電車の中などでも簡単な動作でバッグを外すことができます。ベルトの取り付け部分はカメラバッグのウィークポイントになることが多いので、試行錯誤を重ねて最終的に金属製のDカンにしています」

13〜15インチまで収まるPCスリーブも当然完備。インナーバッグが収まるメインコンパートメントにもバックル式のロックが付いているので、大きな機材を入れていても、カバンが型崩れしない。またバッグを背負ったままフラップを開けて、急に荷室が開いて中身が落ちてしまうようなことも無いので安心だ。このフラップの構造にも、彼の経験が活きている。
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バッグ自体にはっ水性があるので、雨天でも安心して使えるのがありがたい。底面には石打ちと呼ばれる突起が付いていて、水濡れや泥汚れを防ぎつつ、中身を衝撃から護ってくれるそうだ。話はフラップに戻って、その最大の特徴であるフィドロック製のバックルにも目を向けたい。磁石の力でクイックに開閉できるというストレスフリーな使い心地がウケて、近年アウトドアギアなどでもかなりの勢いで普及している機構だが、このバッグではそんな部分にも変わったエピソードが。

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試して、直して、また使って。
軍艦島やアフリカでもテスト


「フィドロックは鉄でできたオスの部分と、磁石の入ったメスの部分でできているんですけど、最初はそれが今と逆に付いてたんです。だけど、それだと外してぶらぶらさせていると車のドアにくっついちゃったりして。あとは、サンプルをテストする中で色んな場所に持って行ったんですけど、軍艦島に持って行ったら、地面に置いたときにロックの中に砂が付いちゃって。それを〈PORTER〉の担当者の方にフィードバックしたら、『そんなことがあるんですね』と言って改良してくれたんです」。

日本を代表するバッグメーカーをもってしても、こうした前例の無いバッグができあがるまでには多くのトライアンドエラーがある。プロトタイプを制作してから計3回サンプルをつくり直し、その度に佐藤さんは先の軍艦島からアフリカまで、挙げきれないほどの旅先へと持って行ってテストを重ねた。ときにはレポート用紙にまとめたり、ときには使用状況を写真で見せたり。フィードバックと改良を繰り返して現在の仕様に落ち着き、完成したときには構想を練り始めてからほぼ3年が経っていた。

「ほぼすべてに意匠を凝らしているので、とにかく、"何となく"作られた部分が全くないほどです。〈PORTER〉の方からも『これはエグいです(笑)』って言われるくらい、見る人が見ればわかる手の込んだつくりなんですが、全体としてはいかにもカメラバッグっぽい、ギークなバッグには見えないのも最大のポイントです。これをつくれるのは〈PORTER〉の中でもトップの職人さんだけだそうで、その方の時間が中々取れなくて。ポーターの方も、『3年も掛けて、3回もつくったのは初めてだ』と言っていましたね。どこまで一般的に需要があるかもわからないけど、採算度外視でこのプロジェクトに付き合ってくれたのは本当にありがたいことです。」。

"URBEX-1"について、「半分は僕の好みですが、日常生活と旅、どちらでも使えるので、多くの人にとって実際に便利なはずだという想いでつくりました」と佐藤さんは言う。カメラとレンズをしまって撮影に繰り出すも、パソコンや筆記用具を入れて通勤・通学に使うも、付き合い方は自由。もちろん、佐藤さんにならって旅先でその機能を存分に試すというのも、想像するだけでちょっとワクワクさせられる。
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「今まではあくまで撮影が目的であって、旅自体が目的だと思ったことはなくて。だから無目的にただどこか行きたいな、とか思うことってなかったんですね。でも外出自粛があって、もう3ヶ月もどこにも行ってない。この20年くらいの間で初めてだと思います。ここまで禁じられると、さすがにどこかに行きたくなるもんですね」。

佐藤さんはそう言って笑う。きっとまた彼は、まだ見ぬ奇界を目指すのだろう。新たな旅の相棒を携えて。


Text_Rui Konno / COVERCHORD


佐藤健寿
武蔵野美術大学を卒業後、米国留学中にネバダ州のエリア51を訪れたことを皮切りに、世界中の"奇妙なもの"を求めて各国を訪れるようになる。『奇界遺産』シリーズをはじめ、多数の写真集を発表し、ラジオやテレビ出演などを通して今日では各方面でその個性を知らしめている。雑誌や広告の撮影、キャンペーンの監修など、型にはまらず活動中。
https://instagram.com/x51
https://kikai.org/



KIKAI x PORTER
URBEX-1 TRAVEL SHOULDER BAG
Price_¥59,000
Color_BLACK
Internal Size_H260mm × W370mm × D40mm~D150mm
Weight_1500g


KIKAI x PORTER
URBEX-1 INNER CAMERA BAG
Price_¥19,000
Color_BLACK
Internal Size_H200mm × W280mm × D130mm
Weight_400g

※ご購入特典として先着でポストカードセットをお付けします。
(数量限定・先着順により数がなくなり次第終了)

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