TRANSIT FONTOLOGY
尾原史和にきく、フォントの軌跡
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COVERCHORD CULTURE

TRANSIT FONTOLOGY
尾原史和にきく、フォントの軌跡

トラベルカルチャー誌「TRANSIT」の発刊第51号となる「東京」特集が3月19日(金)に発売となる。
前身「NEUTRAL」創刊時より本誌のアートディレクターを務めた〈BOOTLEG〉代表 尾原史和にフォントとデザインへの想いを語ってもらった。
2008年の創刊以来、"美しきもの"を求めて旅をするトラベルカルチャー誌「TRANSIT」の発刊第51号となる「東京」特集が3月19日(金)に発売となる。
明るい時代と厳しい時代を繰り返しながら、大きく発展していった東京。新型コロナウイルスの感染拡大という歴史的な危機に翻弄されながらも、人が集うこの都市について改めて考えようと、時代を超えて東京を探索した濃厚な1冊が完成した。

また前身「NEUTRAL」創刊時より本誌のアートディレクターを務めた〈BOOTLEG〉代表 尾原史和が本号をもってその舵を次の世代へと受け渡すこととなった。

今回COVERCHORDでは、所縁の深い「TRANSIT」と長年にわたり歩みを共にしてきた〈BOOTLEG〉への感謝の意を込め雑誌のオリジナルフォント、通称「TRANSIT FONT」を用いたTシャツを製作。
雑誌の象徴ともいえるフォント本来の魅力が引き立つよう、ボディカラーはホワイトのみ。
6つの都市名とTRANSITを取り巻くキーワード4つを配した。

本記事では「TRANSIT」編集長・林紗代香を聞き手に迎え、美味しい食事と少しのお酒を囲みながら、
「TRANSIT FONT」の生みの親、アートディレクター・尾原史和に「TRANSIT」との歩みを振り返りつつ、フォントとデザインへの想いを語ってもらった。 CC_FEATURE_TRANSIT_FONTOLOGY_01.jpg 林:まずは、尾原さんがそもそもデザイナーを志そうと思ったきっかけを教えてください。

尾原:一番最初でいうと高校の時からテキトーにやっていて、単純に美術の成績が良かったの。卒業しても働きたくなかったから、とりあえずで地元高知のデザイン専門学校に行ってた。卒業後は20人くらいしかいない高知の印刷会社に就職して2年働いたんだけど、田舎で続けてゆくとある程度上限が見えて。21歳で上京してきた。もちろん知り合いもいないなかで、先に家だけ借りて。偉そうだけど、やればいけるなと勝手に思っていた。

林:とりあえずではじめたデザインの仕事が、性に合ってたんですね。東京での人間関係はどう切り開いていったんですか?

尾原:渋谷付近に住もうと思って、代々木上原の風呂なし四畳半を借りてから就職先を探したんだけど、この土地感が効いたと思う。
渋谷から近いから色々な人から(酒の席に)呼ばれてもチャリですぐ行けるし。
たまたま「Asyl(アジール)」に就職できて佐藤直樹という人についたけれど、そこは1年足らずでやめちゃった。
ただ、その期間に東京で知り合った人との出会いが今の立場に繋がっている。
仕事なんて何1つない状態でも「尾原くんは有名になるから」と言っていろんな人に紹介してくれていたからね。
やるしかなかったし、やる気にもなっていた。

林:東京の先輩たちからおもしろがってもらえる素地もあったんでしょうし、努力もされたんだと思います。同じ業界に限らず、この人の仕事の完成度っていいよなあと思えるような、憧れの人はいましたか?

尾原:20代の頃、好きなデザイナーがいた。当時のCDジャケットはほとんど網羅していたし、音楽業界を牽引していた感覚があって。当時は知識もないから「すごいな」と思っていたけど。若い頃は無知だったこともあって知らなかったけれど殆どの作品にネタ元があることを知って驚いた。もちろんリスペクトとしてのことだろうし、その文化を日本に伝えた役割としてはとても重要な要素を担っていたと思う。

特に20代の間は独立もしたし、知識を得ようと躍起になっていたけれど、30代は自分に向かっていたから、あまり他は気にしていなかったかな。
いま気になる名前を挙げるとしたら、ヨーゼフ・ボイスとマルセル・デュシャンなど現代美術の基礎となる人たちが気になっているかもね。

林:グラフィック・デザインという観点ではないのですね。興味をもったきっかけはどこにあるのでしょうか?

尾原:30半ばに出会った特別な人が1人いて、その人も現代美術家なんだけど。
その人と会って話をしているうちに彼らの「深さ」を学ばせてもらった。
山部宏延さんという方ですが僕にとっての現代美術の世界を学ばさせてもらった重要な人。
アパートの一室をアトリエにして、床が落ちるほど作品が積み上がっているの。それを見たときゾワっときちゃって。
自分に向き合う覚悟のレベルが、僕みたいに酒飲んで仕事して「なんとかなるでしょ」って感じで生きているのと全然違う。
会社として、組織としてやって行く現状では、この向き合い方はやろうと思ってもできない。
仕事としてお金が回っている時点で、僕は全員がハッピーになる選択をするべきだけれど、少しでもいいから近づかなければならないなとは感じた。
自分にとって許せる・許せないの倫理観はもつようにしている。

林:クオリティに対する姿勢や、ラインを設ける。

尾原:自分が作りたい・売りたいデザインで押し出して、内容と乖離(かいり)した表紙を作って、誤解して買わせてしまうって常々おかしいと思っていて。それは作家が一番損をするし、極端に言うと売れなくても内容に合ったものを作るべきだと思っている。
だからこそTRANSITは内容にあったものを作るというのが根底にあるし、表紙の写真をどうするかっていうのが一番重要なファクター。
TRANSITでは毎号表紙の候補写真を沢山送ってくるのが伝統になっているよね笑 CC_FEATURE_TRANSIT_FONTOLOGY_02.jpg 林:これでも絞っているんですけどね......
毎回迷ってしまいます。写真として気持ち良いだけではなく、売上として繋げていかなければという責任感もありますからね。
TRANSITの表紙はかなりロゴで印象づけられていますよね。

尾原:ロゴは当時の若さゆえに作れる癖が出ているから特にフックはあるよね。
TRANSITはとにかくロゴが一定での見え方をすることに表紙の意味があって。
写真は裁ち落としで全面に出すというアイデアもあるのだけど、ただそれだけだと号によってはTRANSITだと気が付かない可能性があるから
白背景に黒文字というフォーマットはすごく重要。当時の雑誌の表紙は裁ち落とし写真が多かった印象なので、目立ったよね。


林:「TRANSIT FONT」以前の話になるのですが、尾原さんの言動で印象深かった記憶は、尾原さんがパソコンの前で「なんか違うなあ」って言いながら手書きで企画のタイトル文字を書いていたことがあって。綺麗にフォントを使うよりは手書き文字くらいのラフさが良い場合もあるんですか?

尾原:他のページと差異をつけるために手書きにするということの意味は他とは違う主観的であり、個人的な存在になるという印象になる。連載などはそのために手書きにして記事とは距離をもたせたりするよね。

グラフィックやエディトリアルとしてなによりも意識しているのは、コンポジションの話で、僕はどちらかというと建築設計や構造設計とかと同じような感覚で捉えていて、
ホワイトスペースによる空間や要素による階層の自分なりの感覚があるのでここは人に言葉で伝えにくい部分かもしれない。
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「TRANSIT」第51号
東京特集
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「TRANSIT」第48号
古代文明特集
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「TRANSIT」第10号
イギリス特集
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「TRANSIT」第15号
トルコ特集
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「TRANSIT」第35号
南インド・スリランカ特集
林:TRANSITは特集国やテーマのイメージにあうように、使用するフォントを変更してもらっています。雑誌としてはかなり珍しいですよね。

尾原:しかも、毎号ほとんどオリジナルのフォントをつくっているからね。かなり手間ひまかけている。

林:その欧文フォントがあることで、1冊をキャッチーに見せられているというか、CDのチャプターを選ぶ感覚でどこからでも読めますよね。

尾原:特集誌面に関しては、日本語の文字を大きくして場面転換させるのではなく、英語とフォントデザインのバランスによって構成・企画が変わるっていう場面転換がそこにあるから結構重要なんだよね。区切りをはっきりつけようっていう意図で作っているから。

林:COVERCHORDで制作するプロダクトもフォントが際立つよう、白地のTシャツにTRANSITフォントを配しました。
TRANSITフォントを改めてじっくり見る時間ができて如何ですか?

尾原:フォントに関していえば「TRANSIT」フォントが生まれたのは、前身の「NEUTRAL」発刊前の2003年とかだよ!?
正直すごい昔に作っているからいま見ていると自分の若さにムズムズするというか......ちょっと直したいとこもあるのよ笑

(爆笑)

林:いや、そう思わないと。あの時の自分超えられてないですよね。もう20年近くも前!
CC_FEATURE_TRANSIT_FONTOLOGY_04.jpg 尾原:RとAが特に個性的なのはもちろん、そこだけでは無いんだよね。
Nもいいし。本来は空間をあける箇所を詰めることでわざとバタ臭くしてる。ロゴはそうそう変えるもんじゃないから。あえて更新をしていないし、
フォントを小綺麗に見せるとかではなく、とにかくConfuse(混乱)するもの。Chaos(カオス)であるものっていうのを意識して作っていたから。
ここには自分の知らないものが詰まっているし、読みたいと思わせるようなものを作りたかった。

林:野暮な質問ですが、ご自分が生み出した「TRANSIT FONT」に点数をつけるとしたら......

尾原:95点かな笑
100って言うと変える余地がなくなっちゃうから、95点。
CC_FEATURE_TRANSIT_FONTOLOGY_06.jpg 尾原 史和 Fumikazu Ohara
アートディレクター / 株式会社ブートレグ(元スープ・デザイン)代表
1975年高知生まれ。『TRANSIT』をはじめとした雑誌や書籍、図録、ファッションカタログなどのデザインを中心として、店舗や展覧会のアートディレクションなど多岐にわたり活動。出版社としても写真集や画集などのアートブックなどを発行。季刊誌『tattva』が4月上旬より発売。アトリエの1階ではギャラリーを運営中。著書に『逆行』(ミシマ社)、『デザインの手がかり』(誠文堂新光社)、プロダクト作品『Rule Book』(E&Y)がある。
Website_bootleg.co.jp CC_FEATURE_TRANSIT_FONTOLOGY_07.jpg 林 紗代香 Sayoka Hayashi
1980年岐阜県生まれ。雑誌「TRANSIT」編集長。「NEUTRAL」に創刊時より参加。その後いくつかの雑誌編集部を経て、「TRANSIT」に参加。


Behind the scenes of TRANSIT


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COVERCHORD ORIGINALS
FONT S/S TEE


TRANSIT FONTにフォーカスしたTシャツをCOVERCHORD限定でリリース。
過去に本誌で特集された都市名に加え、COVERCHORDに所縁あるキーワードを配した
全10デザイン展開。

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COVERCHORD ORIGINALS
FONT S/S TEE
Color: WHITE
Price: ¥4,800
Size: S, M, L, XL




TRANSIT 51号
特集:東京
江戸から未来へ時空旅行!


「TRANSIT」初の東京特集。
江戸に幕府が開かれてから400年超。自然災害や戦争のたびに再建を繰り返し、世界有数の都市に成長。
歴史の歩みに想いを馳せつつ、東京の未来を想像して巡った一冊。

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TRANSIT
VOL.51
Price: ¥1,800