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特集記事

COVERCHORD CULTURE

一翠窯
沖縄の“やちむん”工房を訪ねて

型にはまらない唯一無二のデザイン性。
〈一翠窯〉の自由なうつわ作りを覗く。

ぽってりとしたフォルムに大胆かつ伸びやかな絵付が施された、“やちむん”として知られる沖縄の工芸品。
前記事の〈陶眞窯〉 に続き、今回は〈一翠窯(いっすいがま)〉の工房を訪ねた。
そこには窯主・高畑伸也氏の感性が光る、自由なうつわ作りがあった。

型にはまらない、自由なうつわ

〈一翠窯〉のうつわの魅力は、他のやちむん工房と一線を画する、鮮やかな色使いとモダンなデザイン性。「古いしがらみに囚われるとこなく、自分が作りたいものを作り続けたい」そう語る高畑伸也氏は、基礎となる伝統技法は踏襲しつつ、現代的な素材や技法、赤や黄といった色鮮やかな釉薬を積極的に取り入れた唯一無二の作風を確立した。

食卓に並べばパッと心が明るくなるような〈一翠窯〉のうつわは、見た目に美しく、使って楽しい。高畑氏は、自由であることを大切に、言語化できない感情を時間をかけて形にする。〈一翠窯〉がどのように生み出されてゆくか、さっそく覗いてみよう。

〈一翠窯〉を訪ねて

やちむんの里、読谷村(よみたんそん)。南国情緒漂う海辺の町に、〈一翠窯〉は静かに佇む。

窯主の高畑伸也氏を一言で表すなら「自由を愛する人」だ。会社員を辞したのち、タイやインドなどを放浪する旅に出た。旅路の中で立ち寄った沖縄に、東南アジアの島々に通ずる居心地の良さを感じ、2002年に移り住んだ。

美大の卒業生でもなく、窯元の出身でもない。土と接することで我を忘れる時間が訪れる。一つのことに黙々と向き合うのが好きな高畑氏は、ゼロから陶芸家としてスタートを切ることを決意。「琉球陶器」の人間国宝・金城次郎氏の長男、敏男氏に師事し、陶芸の基礎からやちむんの伝統技法に至るまでを学んだ。

2005年に独立。一匹の愛猫と共に〈一翠窯〉を開窯した。

自由になるために作る

例えば、観た映画の背景や登場人物の服装など、何気ない日常の一コマから得たインスピレーションを、デザインへ落とし込むという高畑氏。浮かんだイメージは、一度絵に描き起こしてから作陶へと取り掛かる。

具体的なテーマやモチーフは持たせず、何にもこだわらず自由に作る。自由になるために作る。

窯出ししたその時、予想以上のものが出来上がった喜びや、湧きおこる感情に従って、高畑氏はこれからも新しい作品作りに臨む。

陶芸家という天職

全てのものが還ってゆくところである土。神からの贈りものである火。その両方を相手にする仕事であること。

縄文時代からずっと、人間の歴史と共にあった仕事であること。言葉では表現できない、心の深くにあるものを表現できる仕事であること。旅の中で出会ったこの仕事を、心から誇り愛する高畑氏。

「人びとの期待を良い意味で裏切るような作品をこれからも作ってゆきたい。その為には、自分自身が何かに深く感動していることが大切だと思っています」暮らしを彩る唯一無二のうつわを届けるべく、〈一翠窯〉は今日も真摯に土と向き合う。

一翠窯 / ISSUI POTTERY

Address_沖縄県中頭郡読谷村字長浜18番
Website_touki.biz
Instagram_@issui_pottery

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