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COVERCHORD FEATURE

洋々窯
純朴で愛らしい、暮らしに寄り添ううつわ

マットな質感と鮮やかな色彩。そして、愛嬌ある丸みを帯びたフォルム。
熊本県・上天草で出会った洋々窯の温かなうつわ達。

5月17日 (土) 発売

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熊本県・天草地方には、20を超える「天草陶磁器」の窯元が点在している。
豊かな自然がもたらす土や石を素材に、風光明媚な景色を糧に、個性豊かな作家たちが日々うつわを生み出している。

有明海と八代海にはさまれた上天草市にある〈洋々窯〉の小松野洋介氏も、その一人である。
ころんとした丸みを帯びたフォルム。マットな質感。そして温かく鮮やかな色化粧。彼が焼くうつわには、思わず手に取りたくなる純朴な温もりが宿っている。

上天草市、大矢野町の中心から旧道を奥へ進んだ、海の気配がすぐそこに感じられる静かな集落。
そこに、生家を改装した工房とギャラリーを併せ持つ〈洋々窯〉がある。

潮の香りと土の匂いが混じり合う〈洋々窯〉に、小松野洋介氏を訪ねた。

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「小さい頃から粘土遊びが好きだった」と語る小松野洋介氏は、天草の陶芸家「蔵々窯」許斐良助氏の勧めを受け、本格的に陶芸の道へ進んだ。
修行先に選んだのは、かねてより魅力を感じていた窯元「丸尾焼」。紹介を受けて門を叩き、そこで約7年半の歳月、陶芸に打ち込んだ。
その後は陶芸材料店「陶象」に勤務し、4年間にわたり陶器の原料や釉薬に関する知識を深める。
独立に至るまでの間、素材の技術と理論の両面から陶芸に向き合う日々を積み重ねた。

2003年、自身の工房〈洋々窯〉を開窯。以来、地元天草に根を下ろし、作陶を続けている。
カレーパスタ皿やスープカップ、小鉢、マグカップなど、日常の食卓に寄り添い、料理の味わいを優しく引き立てるうつわを作陶。
他にはないオリジナリティを模索する中で、現在のスタイルを確立した。

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小松野氏の作陶は、天草という土地と強く結びついている。信楽の粘土と地元の土を併用し、釉薬には天草陶石を用いる。

最大の特徴は、緑、黒、黄色といった温かみのある独特の色彩であり、とりわけ彼が表現する緑は、どこか和の趣を湛えた深みを持つ。

もう一つの特色は、丸まった猫のように愛嬌のある、やわらかくたおやかなフォルムだ。
手に馴染む感触を大切にし、料理のジャンルを問わず食卓に溶け込むうつわを生み出している。

カレーや味噌汁など、気取らない日々の料理を包み込むようなうつわは、「特別に鑑賞する」のではなく「使われてこそ」の美しさを宿す。
食器にとどまらず、天草のキリスト教文化、恐竜、太陽の塔、江戸時代の甲冑など、風土や自身の記憶を着想源とした造形にも挑む。
そうした作品には、彼でしか生み出せない唯一無二の存在感が息づいている。

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攪拌した釉薬にうつわの半分を浸し、ある程度乾いたところで別の色を重ねる。
色が交わる部分では、後から浸した釉薬のほうがより強く発色するという。

試行錯誤を重ねて培った経験により、色化粧とマットな質感がほどよく調和し、独特の落ち着きある表情が生まれている。

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小松野氏の制作において、大きな役割を担っているのが「掻き落とし」という技法である。
化粧土を施した後、まだ柔らかい段階で表面を彫り、模様を浮かび上がらせる。絵筆で描くのではなく、手で線を刻むのだ。

「絵が描けないから」と本人は笑うが、フリーハンドによる心地よい即興性とリズムは、手の感触を何よりも大切にする彼の作品と響きあってゆく。

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窯詰めにも一切手を抜かず、一点一点に惜しみなく手間をかける。
使用する窯では「ゼーゲルコーン」と呼ばれる、窯内の熱量と焼成の進行度を視覚的に測る道具を用い、うつわの状態を丁寧に確認している。

この日は、講師を務めた地元小学校の陶芸教室で、子どもたちが作った作品もともに焼成していた。
自身の制作のみにとどまらず、次世代を担う若い作り手たちの経験や学びを支え、天草の陶芸文化の継承にも力を注いでいる。

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「天草のうつわとは何か」という問いに、小松野氏は少し間を置き、静かに答えた。
「来る者拒まず、でしょうか」と。

天草地方の窯元を見渡すと、厳格な流派や堅苦しい伝統などは存在せず、陶芸家それぞれが自由に自分を表現している。
一方で、学びを求める者には惜しみなく技術を伝える。かつての修行先「丸尾焼」もそうだった。
その懐の深さこそが、海のように広がる自由な創作を育む土壌となっている。
「天草のうつわ」には、そうした精神が息づいている。

近年は、原料の価格高騰や、作り手や材料供給者の高齢化など、環境は厳しさを増している。
それでも小松野氏は言う。
「私なりの“唯一無二”のうつわを作り続けたいと思っています」。
その謙虚で率直な言葉の奥には、作り手としての矜持と揺るぎない決意が見える。

天草の自然と文化、人とのつながりの中から生まれる〈洋々窯〉のうつわは、これからも、静かに、そして力強く、日常に彩りを添えてくれるだろう。

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小松野洋介(こまつの・ようすけ)
1966年、熊本県上天草市に生まれる。
1991年から、熊本県本渡市(現天草市)の「丸尾焼」にて焼物の技術を習得。
1998年から、陶芸材料店「陶象」で原料の知識を習得。
2003年、〈洋々窯〉を開窯。

ミニポット
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