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特集記事

COVERCHORD FEATURE

あよお 金澤尚宜
「うつわ」と「けしき」を探す旅

熊本県天草の豊かな風土を、作品へと落とし込んだ
〈あよお 金澤尚宜〉のうつわ。

朝焼けの桃色と、海の青が溶け合うように。
荒野の巌を、鮮やかな苔が覆うように。
土と釉、あらゆる色、質感、模様が、あわいを越えて円融を成すうつわたち。

熊本県 天草諸島 下島。美しい海と山川草木に恵まれたこの地に生まれ、陶芸を生業とする家に育った金澤尚宜。18歳より作陶を始め、キャリア15年目の今年、家業から独立し、妻・あよおさちと共に〈あよお〉を拓いた。

"ambient ceramics" を主題とし、自身を取り巻く天草の自然から受けたインスピレーションを、その手と土で表現する金澤氏。刻一刻と姿かたちを変え、二度とは訪れない瞬間を切り取るように。彼の手から生み出されるうつわは一つとして同じものはない。

ユニットであり、屋号である “あよお” とは、うれしいとき、悲しいとき、驚いたとき、天草の方言で思わずこぼれる感嘆詞。特に意味を持たないけれど、まるく、やさしく、やわらかい言葉。
自然と密接に生きる中でふと出逢う、忘れたくない “あよお” の感情を、彼らは形へと残している。

彼の「うつわ」に宿る「けしき」を探しに、自然の中へと旅に出た。大地を踏み締め歩き、雨に打たれ、波に呑まれ、人間の小ささを思い知り、雲間から射す光に安堵し、自然に生かされているという、あたり前のことを美しく思う。
世界にあふれる幾多の “あよお” を愛おしく感じた。

用と美の融合。溶け合い重なり合う色。自然と人との関わり金澤尚宜が「うつわ」に宿す沢山の「けしき」を感じてほしい。

草、木、苔、花、葉、根、虫、鳥、獣。緑々しく命に溢れた道をゆく。青、茶、緑、黒......数えきれないほどの色彩。どんな「けしき」を思いながら、この「うつわ」は生み出されたのだろう。

途方もなく広い大地を踏み締める。
雲は目の前を走り、雨が頬を打ち付ける。ゴツゴツと連なる巌々。スニーカーの中は砂だらけだ。
人にとって厳しい環境にも、草木は根をおろし花は咲く。
「息吹」や「大地」と名づけられたうつわたちは、雄大な大地そのものだ。

眠気まなこを擦りながら朝を待つ。
一面の闇にぼんやりと光が射す。やがて空と海がひとつの青へと溶けあってゆく。
美しく瑞々しい時間。深海の青、水面に映る淡い光。
海を前にした金澤氏の心情が、一つひとつのうつわに投影されているような気がした。

〈あよお 金澤尚宜〉プロフィール


金澤尚宜「うつわ 」
 1989年、天草・下島に生まれる。18歳のとき陶芸の道へ。2008年、18歳で陶芸の道へ。実家である窯元〈丸尾焼〉に入社。あらゆる表現を器に込めて、全国で陶展を行う。 2022年、〈あよお〉 として窯を開き独立。うつわをつくる日々。


あよおさち 「けしき」
2008年、映像の道へ。 映像ディレクターとして企画制作に携わる。 「絶景階段」、「雨の日の読書旅行」、「すする企画」、「味な字」など。2022年、〈あよお〉 の「けしき」 (映像/写真と文/しつらえ)を手がける。


Website_ayoo-utuwakeshiki.com
Instagram_@ayoo_pottery.naoki 


【イベント情報】
あよお 金澤 尚宜 のうつわ展 “fusion”
会期:2022年8月12日(金) – 8月21日(日) 11:00 - 19:00
会場:ROOTS to BRANCHES
住所:東京都 目黒区 青葉台1丁目 15-9

Translation_Yuko Caroline Omura

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