
COVERCHORD EXCLUSIVE
森山至 個展
at COVERCHORD
天草の自然が生んだ、用と美のうつわ
天草の身近な素材を使い作陶する〈森山至〉。
料理と響き合う「用と美」のうつわを揃えた、初の個展を開催。
2025年9月13日(土) – 17日(水)開催
熊本県・天草市に窯を構える陶芸作家〈森山至〉。
森山氏の作品は、天草の自然を想起させる力強い表情が魅力だ。
それでいて、料理と響き合いながら生活をかたちづくる、「用と美」を兼ね備えている。
豊かな自然が育んだ土、作家自らが拾い集めた素材、海や山からのインスピレーション。
それらが重なり合うことで、ひとつのうつわに複合的な調和が生まれる。
今回、COVERCHORD初となる〈森山至〉個展が開催される。
9月13日(土)より、COVERCHORD Nakameguro、Fukuokaの両店では多くの作品を取り揃え、実際に手に取って鑑賞できる。
また一部の作品は、同日よりCOVERCHORD Online でも販売開始。
この機会に、〈森山至〉のうつわの魅力を直に感じてほしい。
特集後半では、天草の「森山陶器」を訪ね、うつわに宿る森山氏の信条を紐解いていく。




石皿 ¥6,700


さび花器 (大) ¥15,000
2025年9月13日(土) – 17日(水)開催

森山陶器を訪ねて
熊本県天草市五和町手野。海を望む天草市中心部から車で15分ほど、棚田が広がる山あいに森山至氏の工房がある。
彼のうつわに宿る、作家としての信条を紐解くべく、「森山陶器」を訪ねた。
温かい雰囲気のショップが併設された、心地よい工房。
人懐っこい看板猫が出迎えてくれる。

森山至氏が陶芸の道に入ったのは21歳の時。
「ちょっと手伝ってほしい」。気心の知れた友人からの一言をきっかけに、天草の歴史ある窯元のひとつ「丸尾焼」でアルバイトとして働きはじめた。
友人は「丸尾焼」の六代目にあたる長男だった。
陶芸は未知の世界だったが、幼い頃に田畑で土に触れて遊んでいた記憶が自然と蘇り、不思議と「性に合っている」と感じたという。
現場に立ち、職人たちと共に腕を磨くうちに、陶芸は彼の人生に欠かせないものとなっていった。
分業制の中で、入って間もないながらも轆轤を任されるなど、重要な工程を託される機会にも恵まれた。
その経験は若き森山氏を大きく鍛え、確かな自信へとつながっていった。
「独立を見据えて仕事をしろ」という先代の言葉を胸に刻み、9年間の修行を経て独立。
村の食堂跡地をアトリエとして活用し、ついに「森山陶器」を開窯した。
天草をメインに九州各地の土に、
自らの手で採取した土、「手野土 (てのつち)」を掛け合わせている。
天草に生まれ育ち、天草人としてこの地を深く愛する森山氏。
彼のうつわ作りの根底に、「身近な素材を使いたい」という思いが湧き上がるのは、ごく自然なことだった。
「住み慣れた土地の田んぼの土を使ったら、どんな表情が生まれるだろう?」
「藁を釉薬にしたら、どんな景色になるのだろう?」
そんな素朴な好奇心から始まった試みは、やがて現在のスタイルへと結実していった。
粘土の中の空気を抜くための技法「菊練り」。
その名の通り、菊の花のような粘土が現れる。

彼のうつわ作りは、近くの山から土を掘り起こし、独自に調合することから始まる。天草や九州各地の土をベースに、近隣の山で自ら採取した土をブレンドする。
鉄分を多く含む土は、あえて精製しすぎないことで、鉄分が斑点模様のように浮かび上がり、独特の表情を見せる。
釉薬もまた土地と結びついている。
マツやカシの灰から生まれる灰釉は淡い緑、鉱物を元にした鉄釉は深い黒、天草の塩作りの副産物であるカルシウム釉は白を彩る。
科学的に調合された釉薬に頼るのではなく、土地から得られる素材を組み合わせ、その複雑さを受け入れることで、作品に多彩な表情が生まれているのだ。
しかし、不安定な自然素材を使うことは、しばしば裏切りをもたらす。窯の半分が失敗に終わり、失意の底に沈む日もある。
だが一方で、思いがけない偶然が新しい色や美しい質感を生み出し、歓喜する瞬間もある。
森山氏は「なぜ自分は自然素材に手を出してしまったのか……」と笑いながら、その不確かさを実験のように楽しみ、制作を続けている。

森山氏のうつわには、料理の魅力を引き出す素朴な力が宿る。
素材へのこだわりと同様に、“料理と調和するうつわ”をモットーとし、用と美を兼ね備えたデザインに注力してきた。
「ポンポンとアイデアが浮かぶタイプではないんですよ」と笑う森山氏。
轆轤の前で熟考する日もあれば、海や山へ出かけた中での偶然の発見が新たな制作への手がかりになることもある。
山中で見つけた火山灰の塊を土に押し当て、模様を写し取った「石皿」はその象徴だ。
さらに、手にしたときの「重さ」にもこだわり、使い手の感覚までを含めてうつわを考える。
そうして出来上がったうつわは、料理を盛ることで完成する。
天草の土、海や山からの恵み、土地に息づく営み。そのすべてが食卓で重なり合い、うつわはまるで新たな命を帯びる。
森山氏のうつわには、天草という場所に根ざした確かな「暮らしの美学」が息づいている。

山中でたまたま見つけた火山灰の塊に
土を押し当てて模様を写し取った「石皿」。
素材そのものの表情を活かすため、
釉薬は鉄分の粉を塗る程度に薄くかける。

好きな工程は「轆轤」だという森山氏。
次の創作についての思考に耽る、大切な時間でもある。

粘土を石膏に押し当てる「たたら」と呼ばれる技法。
〈森山至〉を象徴する「たね皿」は、
料理のプロたちにも愛用される。

ミネラルが豊富な天草の塩が作られる過程で出た、
副産物のカルシウムを釉薬に使用し表現される白。
知人が塩作りをしている「嘉六屋 鹽」へ足を運び、
素材となるカルシウムを譲ってもらう。


2025年9月13日(土) – 17日(水)開催

森山至 個展
at COVERCHORD
会期:2025年9月13日(土) – 17日(水) 11:00 - 19:00
※初日9月13日(土) COVERCHORD Nakameguro にて作家在店予定
※同日よりCOVERCHORD OnlineOnlineでも、一部発売いたします
会場:COVERCHORD Nakameguro 東京都目黒区青葉台1-23-14 1F
Instagram_@coverchord nakameguro
会場:COVERCHORD Fukuoka 福岡県福岡市中央区警固2-17-23 1F
Instagram_@coverchord_fukuoka

森山至(もりやま・いたる)
1982年 熊本県天草生まれ。
天草「丸尾焼」で9年間の修行の後、高知にて薪窯を修める。
2014年に独立し、天草に「森山陶器」を開窯。
天草で採れる原料を主体に、“料理に調和する器”をモットーとした作品を生み出している。
Instagram_@moriyama_touki
個展によせて -作家コメント-
COVERCHORDさんでの個展は初めてで、常設にはないたくさんの種類を見てもらうのが楽しみです。主役となる料理の名バイプレイヤーとして、それぞれの食卓で活躍してくれたら幸いです。





















































