COVERCHORD FEATURE
nonnative × UNDERCOVER
OZISM
2024 SS COLLECTION vol.3
機能性と美意識とのバランスによってその姿勢を黙して語る、
質実剛健な2型のシューズとそのバックグラウンドに焦点を当てる。
「OZISM」のネーミング由来となった小津安二郎がレーベルに与えた影響や、
現在の展望について、UNDERCOVERデザイナー、高橋盾の証言をまとめる。
3rd DELIVERY
6月22日 (土)発売
〈UNDERCOVER(アンダーカバー)〉を手がける高橋盾と、〈nonnative(ノンネイティブ)〉のデザイナー・藤井隆行によって、2022年末に突如発表された「OZISM(オジズム)」というレーベル。
ファッションの世界に長らく身を置いてきた両者が従事する、いわゆるブランドやコレクションとは隔てたものづくりの起こりと、草木染めや和紙といった技法・素材を採用した今春のアイテム群について、全3回にわたって考察してゆく。
文:今野 壘
編集者。1987年生まれ。ファッション分野を中心に活動中。
THEMATIC REPORT
#3 SHOES
既存のコレクション発表やファッションビジネスの定石から外れたレーベル、「OZISM(オジズム)」の全容を解く、全3回のレポートシリーズ。
最終回では、機能性と美意識とのバランスによってその姿勢を黙して語る、質実剛健な2型のシューズとそのバックグラウンドに焦点を当てる。
RIG(リグ)
設立は2019年。スポーツやワークアウトなどによる足の疲労を緩和・軽減するためのリカバリーサンダルに特化したものづくりを続ける日本発の新進ブランド。
オジズムのリグ
デザイナーの藤井隆行が偶然アウトドアショップでリグのサンダルに出会い、強い関心を持ってオファーしたことでノンネイティブとのコラボレーションが実現。高橋盾と藤井がともに実生活で同モデルを頻用したことで、オジズムでのフィーチャーへとつながった。スタイルは今回のために型から起こしたオリジナルで、通常のリグにはない、日本的な雪駄を想起させるトングタイプになっている。緩衝性の高い厚めのフットベッドとソールはリグが設立以前から長年かけて培ってきたものだが、アッパー同様に今回オジズムで展開している草木染めのウェアに合わせた色出しが行われている。いわゆる“突っ掛け”のようだが、バックストラップが設けられた、よりアクティブな動きに対応する設計。
作務と雪駄
―円覚寺派法務部長・須原安仁の証言
「私は寺の生まれなので、仏門に入るのは自然なことでした。住職だった祖父に師事し、修行時代の自分の足元は下駄。雪駄は和尚が履くものという認識でした。いまも毎朝の日天掃除は大抵の場合、裸足に雪駄で行っていますが、特別なときにはきれいな雪駄に履き替えて気持ちを引き締めています。作務衣は来客時ではなく、仕事用の正装といった感覚。昔は、境内での作務は丈夫な服であれば何でも良かったそうです。時代が貧しかった頃は特にそうだったんでしょうね。本当の正装では足袋を履くので、雪駄はあくまで日常的なもの。私たちはこの鼻緒にすっかり慣れているので、革靴よりも雪駄の方が楽ですね」。
GUIDI(グイディ)
イタリア・トスカーナ地方で約130年続く老舗タンナーが母体のシューメイカー。各国のビッグメゾンなどに長年レザーの供給を行っており、2004年より独自のシューズの開発・発表を続けている。
オジズムのグイディ
2022年のスタート時から、オジズムでは定番の足元として独自の仕様のグイディを制作している。これまでフロントジップ、バックジップといったスタイルのバリエーションがあったが、今回はトレッキングブーツをやはりウェアの色展開に即したカラーウェイで展開している。堅牢でソール交換によって長く履き続けられるノルウィージャンウェルテッド製法をここでも踏襲。アウトソールには前方のラグが着用時にほぼ隠れるレイアウトでビブラムソールを採用していて、より気軽に履けるようヒールは低めにしている。シューレースホールの上にスピードフックがふたつ付くミッドハイトは、フルレングスと夏場のショーツ、両方に馴染むようにと藤井が考案したプロポーション。アッパーはタフなホーススエード製。
トスカーナ州ペーシャの工場にて
グイディでは“オブジェクト・ダイイング”と彼らが呼称する、製靴後タンブリングによって染色を行う独自の方法を採用している。
革を鞣す自社工場とは別の専属工場で製靴を行い、ふたたび自社工場へと戻して前述のオブジェクト・ダイイングを行うという運びだ。この特殊な靴づくりは、いまだほとんどの工程が人の手作業を必要とするもの。染色後のブラッシングを経て、荒々しくも美しいグイディの表情は生まれている。