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COVERCHORD CULTURE

Rainbow Disco Club 2023
KAMMA & MASALO INTERVIEW

〈Rainbow Disco Club〉特集第2弾。
フェス開催に先駆け〈RUSH HOUR〉を代表するDJユニットにインタビューを敢行。

音楽と自然を賛美するダンスミュージックフェスティバル〈Rainbow Disco Club〉も、開催まで残すところ2週間。
待ち遠しい開幕に先駆けて、COVERCHORDでは出演アーティストにインタビューを敢行した。

オランダ・アムステルダムをベースに活動するKamma & Masalo。若くして〈RUSH HOUR〉に所属したふたりは、ヨーロッパを中心にクラブやフェスティバルで活躍し、次世代のシーンを担うホープとして世界中から注目を浴びるDJユニットだ。

プロのDJを両親にもつ生粋のサラブレッドKammaと、多様な価値観の中で自らのキャリアを形成してきたMasalo。
彼らの音楽的ルーツはどこにあるのか? 日本においては未だあまり知られてないふたりに直接話を聞いた。

〈RUSH HOUR〉アーティストとして〈Rainbow Disco Club〉2023の最終日アクトを飾るKamma & Masalo。エモーションが高揚すること間違いない彼らのプレイは、ぜひフロアで体感したい。

COVERCHORDでは、レーベル設立25周年を記念し制作した〈RUSH HOUR〉×〈nonnative〉×〈Rainbow Disco Club〉の特別なトリプルネームTシャツも好評発売中。

KAMMA & MASALO
INTERVIEW

―音楽を生業にするに至った原体験など。お二人ご自身のルーツを教えてください。

Kamma: 両親は共に1980~90年代のプロDJだったので、家では常にヴァイナル・レコードに囲まれていた。二人とも週5でDJをしていて、レコードバッグにはジャズ、ファンクからブギーやディスコ、さらにヒップホップ、ハウスまで多種多様なレコードが詰まっていた。
私は割と小さい頃からレコード・ディギングをし、自分のコレクションを作り始めていた。小学校の時からRoy Ayers、John ColtraneやGuruのJazzmatazzにめっちゃハマっていたね。10歳ぐらいの頃、初めて親と一緒に行ったコンサート。それがアムステルダムの「Paradiso」でGeorge Clinton Parliamentだった。ファンクを体感し、カラフルな服に身を纏った人たちを見たのは、私の人生を一変する体験となったね。ハイスクールに入ってからは自分で色々なコンサートに行くようになり、エレクトロニック・ミュージックのコレクションも増えていった。

Masalo: 俺の場合は、家でJimi Hendrix、Yellow Magic Orchestra、Prince、De La Soulなど、色々な音楽に囲まれて育った。父はいわゆる音楽オタクで、何か音楽関連のテレビ番組があれば必ずそれをテープに録画して、その時々で発見したばかりの新しい曲や映像を俺たちに見せてくれた。また父はギターの大ファンでもあった。子どもの頃、俺がレゴで遊んでいる横で、父が仲間と一緒にジャムセッションしているのはごく日常的な風景だった。兄はずっと前からラップとかビートメイキングとか音楽をコレクションしたりDJしたりすることにハマっていたし、「SL 1200」を2台持っていたから、そこから全てが始まったね。好む好まざるとに関わらず、うちではいつもパーティーだった!

両親の家でレコード・ディギングをする Kamma

―お二人が影響を受けたアーティストや、インスピレーションの源になっている人物や場所、物事などあれば教えてください。

Kamma: アムステルダムで私が影響を受けた場所は二つある。一つ目はハイスクールの時によくコンサートに行って、DJがプレイするアフターパーティーに参加した「Paradiso」だね。当時、本当はクラブに入れない年齢だったけど、コンサートに行けば、アフターパーティーまで残れるって分かっていたんだ。
そして、エレクトロニック・ミュージックに恋した場所が「Club Trouw」。そこでRon TrentとかMoodymannとかAntal & HuneeのDJセットを体験した時はド肝を抜かれたよ。ある時、父と友達と一緒にLarry Heardを見たのを覚えている。友達や家族らとそのようなミュージック体験を共有できることが本当にラッキーだな、と実感した。

Masalo: 当たり前だけど、いつも家にプレイしにきていたアーティストたちと家族のおかげだな。日本とも特別な繋がりがある。俺は母が日本人で父がオランダ人なので、両方の文化がある(バイカルチャー)家庭で育った。十分なお金が貯まったら家族旅行で日本に行ったし、子どもの頃に何度か夏休みを日本の親戚と過ごすこともあった。従兄弟のHagiさんはレコード・コレクターで、彼と、彼の奥さんと、そして兄と共に日本のミュージックストアでレコード・ディギングをして、大量の新しい音楽をゲットしたという楽しい思い出がある。Hagiさんはたくさんのレコードを持っていて、彼の部屋にあるレコードがあまりに重いから、床全体が崩れそうとまで言われていた。兄がたくさんのレコードをもらって、俺にはCDをくれた! そのCDの中にJoe ClaussellによるSnowboyの「Casa Forte」のリミックスが載った『Viva! Emma Latin House Compilation』が入っていた。たぶん14歳ぐらいの時にそれを初めて聞いて、人生が変わったね。今でもその曲をプレイするし、聞くと鳥肌が立つ。Hagiさんは知らないかもしれないけど、今の自分たちの活動があるのは彼のおかげだな。

母ユミコと一緒に写る Masalo

―日本発の音楽から影響を受けたものや、日本文化への印象を教えてください。

Masalo: そのこだわりとか繊細さ。アメリカの影響を受けたクロスオーバー・ブギーとかエレクトロポップのサウンズは好きだけど、芸能山城組のようなものもすごく好き。彼らが作った『アキラ』のサウンドトラックは、これまでに作られた音楽の中で最もインテンスで感情に訴える力がある作品のひとつだと思う。ドラムも、詠唱もトランスも。全部がピュア。「文化」という概念と「時間」という概念が交差し、良い意味でぐちゃぐちゃに混ざり合う時が俺にとって本当に一番おもしろい。音楽を作り出す伝統的な方法とモダンな手法を組み合わせて、また伝統文化と現代のストリート・カルチャーを重ねて。いかに品や才能を持って取り組むかだと思うし、日本にはそれに見事に成功している作曲家がいると思う。

Kamma: 私は日本食を食べにきた。

Kamama と父 DJ Dr. Tiong
2018年の Rainbow Disco Club にて

―おふたりがユニットを組むに至ったストーリーを教えてください。

Kamma: アムステルダムのクラブ「Paradiso」とか「Club Trouw」でばったり会ったね。後は伝説のKC The Funkaholicが主催するBoogieBashパーティーにも参加した。

Masalo: 俺は兄のMomoと、Kammaは両親と来ていた。我々はダンスフロアに居合わせた数少ない「若者同士」だったので、そこから繋がったね。

Kamma: 学校の友達と比べると私の音楽的嗜好はアウトサイダーだった。だから同じような音楽を好きな人に出会えてすごく嬉しかった。一緒にクラブに行ったり、同じように音楽好きな仲間と一緒に自分たちのパーティーも主催するようになった。それが今では「Brighter Days」と呼ばれているパーティーだ。

Masalo:「Brighter Days」はもちろんすごくローキーなところから始めて、小さな会場に自分たちで機材を持ち込んで開催していた。いつも自分たちのサウンドシステムを持参してもいいか尋ねたけれど、すごいパワフルなサウンドシステムを持って行ったから、「yes」って言ったことを後悔していた会場もあるんじゃないかと思うな。棚に置かれたグラスがガタガタ震えて、オーナーに睨まれたりとかあったね。でもいつもポジティブでリスペクトなパーティーバイブだったから、最終的には大丈夫だったね。

―〈RUSH HOUR〉加入の経緯や、Antalとの馴れ初めのエピソードを教えてください。

Masalo: 〈RUSH HOUR〉のショップとか、「Disco3000」みたいな〈RUSH HOUR〉のパーティーや「Club Trouw」で開かれたイベントや「OT301」などを通してだね。確かにアムステルダムのエレクトロニック・ミュージックのシーンは結構広いけど、サウンド的にはちょっと一方通行な感じがすることもあったから、そういうのがすごく新鮮だった。〈RUSH HOUR〉のパーティーはDJがプレイできる範囲を広げたと思うし、Antalと彼が招待したDJたちは本当にその分野における達人だった。そのパーティーでは、音楽の好みが違っていたり、バックグラウンドが違う人たちが少しずつ近づいてくるような気がしたな。

Kamma: スピーカーが高く積み上げられたコンクリートの地下室。そこに大音量で流れるFela Kuti、Peven Everett、Carl Craigの曲たち。想像してみてください。それはもう強烈で、居心地がよかったよ。そこから全部オーガニックに広がっていったね。レーベルで自分たちの音楽をリリースしたり、パーティーでプレイしたり、今でもそれは広がっていて、みんなとそれを共有できることにすごく感謝している。

Dekmantel Selectors での b3b の直後に Antal と一緒に。
Photograph_Déborah Valbuena

―初参加となる〈Rainbow Disco Club〉、意気込みを教えてください。

Kamma: 嬉しいことに、これまでも二回参加したことがあって、一回目はフェスに遊びに来ていて、二回目はMasaloがRush Hour DayでDJをしていた。だからそういう意味ではすごく馴染みがあるし、そこでしか味わえないローケーションと、最高の音楽と仲間はいつもハイライトだ。今回は初めて二人でプレイできることがほーーーんとうに楽しみです!

―「 For Your Love (Kamma & Masalo Radio Mix) 」 の大ヒットが記憶に新しいですが、制作秘話などあれば教えてください。

Masalo: ディギング中にオランダ・ベルギーのグループDiscothèqueによる原曲を発見して、聞いた瞬間にびびっときたね。ちょっと前のコンポジションによくあることだけど、今の音楽ランドスケープでは通用しないパーツもあった。例えばハッピーすぎるセクションに転調して、みんながすぐにダンスフロアを空にしてしまうんじゃないかと思うようなダサいのものがあったり。それでも原作はリスペクトしているし、元々の意図を台無しにはしたくなかったので、ある部分をカットして、他のところを引き伸ばして、たくさんのサージカルEQをして、ライブで何度も試したよ! フェスでプレイする度にもうフロアが爆発したね。

Lente Kabinet Festival 2022
Photograph_Yannick van de Wijngaert

ーDJをする時やオリジナルのプロダクションを制作する際のこだわりなどありますか?

Kamma: DJをする時は「考える」というより、「感じる」ようにしている。感受性を高めて、直感に身を任せるというか。DJをするということは、会場全ての人の感性と一緒に、そのジャーニーを共有できることが重要だね。
スタジオで音楽を作っている時は、自分のその時の精神状態を表すサウンドになる。例えば、音楽を作る前に瞑想をすれば、曲はすごくドリーミーでコズミックになるけど、違う気分の時はもっとダークで鮮烈になる。DJをする時と一緒で、その時の直感次第だね。

Masalo: クラブの空間にあるような、身体的かつ精神的な空間を作ることも重要だと思う。サウンドシステムとかヘッドフォンの音量を上げることでそれができる。耳には悪いかもしれないけど、個人的にはその迫力が必要で。少し時間が経つと音量も下げるけど、素直な意志で力強く始めることで、最初のスパークを作って、そしたらそれ以降はもう直感というか、潜在意識の状態に自分を置き、そのプロセスをリードすると、あわよくばマジックな何かに到達できる。いつもじゃないけど、それができた時はすぐにそれを感じる。

Kamma & Masalo
アムステルダムのスタジオスペースにて

ー今後の活動や展望に関して教えてください。

Kamma: 選りすぐりの曲を集めたダブルLPを今、〈RUSH HOUR〉でコンピレーションしている。伝説的なアーティストのリイシューとか、今までヴァイナルに載らなかった曲とか、DJセットでプレイしているスペシャル・エディッツとか、未リリースの地元アーティストの作品とかが載るコンピレーション。あともう少しでリリースされるよ。
後、Masaloが日本のプロデューサーの永山学氏と一緒にやっているリリースも、もうじき〈RUSH HOUR〉から発表される。運が良ければ、まさに今、日本のレコードストアでテストプレスが手に入るかもしれない……


―好きなファッションやコーディネートへのこだわりを教えてください。

Kamma: 私はいつも動きやすい服を着るね、大体バギーでオーバーサイズのもの。山でのハイキング用の防水・防風ジャケットみたいなアウトドアファッションも大好き。それはやっぱり父から受け継いだのかもしれない。

Masalo: なんて説明したらいいのか全く分からないんだけど……言うなればアウターウェア × ストリートウェア × オートクチュールかな。上品だけど、実用的で、丈夫なテクニカルファブリックが好き。色は大体黒だね。俺の場合は父の影響は全くないね。



KAMMA & MASALO
天性のDJであるKammaとMasaloは、音楽に対するオープンハートなアプローチと、二人の幻想的なシナジーでアムステルダム内外のシーンを豊かにしている。それぞれ単独でも才能あるアーティストである彼らは、オーガニックなフローと、対照的なサウンドの間を難なく移行する能力を備えた驚異的なDJタッグチームを形成する。力作である「Dekmantel」の「Boiler Room」でのプレイのほか、クラブやフェスへの出演を含むフルツアーは世界中のダンスミュージック文化に感動と刺激を与えてきた。

KAMMA
25年以上プロのDJとして活躍する両親の間で生まれたKammaのDJへの道のりは極自然だった。その直感力とオープンさから幅広いサウンドを取り入れ、自身の伝統ルーツよりもさらに奥深く追求する。エナジーと感情を楽々と行き来しながら、複雑なリズム、ドリーミー・ウェイブそしてニュー・エラ・エレクトリニックスを旅する。

MASALO
Masaloの音楽性からは多様性のある生い立ちの影響を垣間見ることができ、ハイブリッド性は彼のDJ活動の中核をなしている。また、彼のプロダクションも同じ精神を体現していて、世界中の音楽ファンからプレイされ支持される。彼のベスト作品は関係の深いレーベル〈RUSH HOUR〉からリリースされている。

Cover Photograph_Yusuke Oishi
Translation_Yuko Caroline Omura

Rainbow Disco Club
2023

日付: 4月29日(土)・30日(日)・5月1日(月)
会場:東伊豆クロスカントリーコース特設ステージ
静岡県賀茂郡東伊豆町稲取3348
オフィシャルサイト : rainbowdiscoclub.com
チケット : ZAIKO / RA

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