特集記事
COVERCHORD CULTURE
クリエイターにきく、いま行きたい場所
世界的なパンデミックの影響で、以前のように心の赴くままに外出できなくなった今、「旅」は日常から遠く離れてしまった。
パンデミックの終息を願いつつ、各界のクリエイターたちに、このような状況の中で今思いを馳せる国、旅先、土地、町、恋しい味など、もう一度行きたい場所、そしてこれから行ってみたい場所を聞いた。
思うままに行きたい場所へ足を運ぶことは叶わないけれど、思い描けば旅は半分始まっているようなもの。あなたにとっての行きたい場所は、恋しい場所はどこだろう?
野村訓市
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「ニューヨーク」
しょっちゅう行っていたからこそ行かなくなってそのありがたみをしみじみと感じる毎日。普通に一番仲の良いといえる友達たちが何人も住んでいるし、大したことをしなくても馴染みのカフェとかでコーヒーでも飲みながら、だらだらと話をしたいし、バーとかをはしご酒したい。大体ローワーイーストサイドにいてぶらぶらしてれば誰かとあってどっかへ行く。だから特定の店とかにいくというより半径500メートルくらいのあの辺りにいきたい。
これから行ってみたい場所
「パタゴニア」
誰もいないような土地に行きたいなと思っています。パタゴニアは人口密度が恐ろしく低い場所。そういうところでただぼーとしたりしながら、日常から離れて、「あぁ、思えば遠くに来たもんだ」と実感するようなところだったらどこでもいいのだけれど。ここではない何処かへ!というのが旅の醍醐味で、今ほどそれを感じていることはない。
野村 訓市(のむら・くんいち)
編集業等
東京出身。編集/執筆/デザイン業等。J-Wave 毎週日曜20時「Travelling Without Moving」パーソナリティ。
Website_tripsters.net
Instagram_@kunichi_nomura
Moises Saman
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「ペルー」
ペルーは私の母国ではありますが、混血家庭に生まれ幼少時代の大半をヨーロッパで過ごしたため、人生において関わりの少なかった地です。訪れるようになったのは大人になってから。足を運ぶたびに新たな魅力が発見され、ペルーの自然が織りなすコントラストからは無限の可能性を見出せます。アンデスの厳しい山脈。まるで別世界のようなアマゾンの美しさ。そして私のペルーの家族の地元でもあるカヤオ(リマの港)の砂気のある路地道。私はこの地に戻る日を、心底待ち焦がれています。
これから行ってみたい場所
「ナミビア」
ナミビアは私の最も行きたい場所として、リストの一番上にある国です。野生動物に夢中な幼い娘の為に、サファリの行き先を妻と調べ始めています。この国は多くの点でユニークな地だと思います。非常に多様な異文化体験、自然体験の機会があり、その景観はまさに息を呑むほど美しく、野生動物も豊富です。また不安定かつ混乱の絶えない地域のさなかで、治安も良く安定したオアシスのような存在でもあるナミビア。小さな子供を連れての旅に適していることも特筆すべき点です。
Moises Saman(モイゼス・サマン)
写真家
1974年ペルー・リマ生まれ、スペイン育ち。1998年にカリフォルニア州立大学でコミュニケーション学と社会学の学位を取得。卒業後、Newsday社のスタッフフォトグラファーとして7年間、9.11同時多発テロの影響を取材し、アフガニスタン、イラク、その他の中東諸国を行き来していた。2007年には、ニューヨーク・タイムズ紙のフリーランス・フォトグラファーとなり、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ニューズウィーク、TIME誌などの国際的な出版物にも定期的に寄稿している。2014年、マグナム・フォトにノミニーとして招待され、その後、正会員となる。2015年には「アラブの春」をテーマにした作品でグッゲンハイム・フェローシップ・イン・フォトグラフィーを受賞し、写真集『Discodia』を出版。NY、東京、カイロ、バルセロナを拠点に活動後、現在、家族と共にヨルダンのアンマンに在住。
Instagram: @moisessaman
吉本 ばなな
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「台北の豊盛食堂」
何回も行きました。とにかく量が多くて、なにもかもがおいしくて、内装もすてきで、場所も便利で、最高の、私にとって理想のお店です。おばさまたちがてきぱき働いているのもいいし、いつも満席で活気がある。今も決して痩せてはいないが、あのお店が近所にあったら私は大変なことになっていただろうと思うから、ちょうどよかったのかもしれない。また行き来できるようになったら飛んでいきたい。写真は、出版社の接待でこれでもかと料理が出てきて、「まだ来るのか!」とびっくりしているところです。でもとなりにいた台湾の大人気イラストレーターのSOUPYちゃんは涼しい顔をしてモリモリ食べていました。台湾の人たちの底力はここから来るのか、と納得しました。
これから行ってみたい場所
「サントリーニ島」
まだ行っていないけれど行きたいところ、それはギリシャのサントリーニ島です。すぐそばのミコノス島には何回も行っているのに、そして毎回時間があったら船で行こうと思うのに、なぜか行けないのです。それはミコノスに着いてしまうと全てに満足してしまって、もうどこにも行かなくていいやと思うと同時に、昼間は暑くて出歩けないから海かプールに行くしかないので、そしてほとんどのお店が深夜までやっているので、ものすごく宵っぱりの生活になって、起きるともう10時くらいで、今から船に乗って別の島に行く?暑いしめんどうくさい、だらだら朝メシを食って海に行くか~、そして海→ランチ→酔っ払う→プールでさます→夜の街にくりだす→深夜に帰ってきてホテルのバーで一杯飲んで寝る......ということになってしまい、実現していないのです。近くて遠い憧れの場所でした。
吉本 ばなな(よしもと・ばなな)
小説家
1964年 東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。'87年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。'88年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、'89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で山本周五郎賞、'95年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版され、海外での受賞も多数。近著に『吹上奇譚 第三話 ざしきわらし』など。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。
Twitter_@y_banana
Instagram_@bananayoshimoto2017
U-zhaan
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「中国・九妹土碗菜」
中国四川省成都にある食堂。四川料理を食べるためだけに行った成都への旅の中で、もっとも印象に残ったのがここの「香辣恐竜兎」だった。麻辣スープの風呂に横たわる丸々1羽のウサギは、箸で掴むだけで崩れてしまうほど煮込まれている。汁をたっぷり含ませて口へ運ぶと、香りと辛みと旨味が顔の下半分いっぱいに広がる。いつか再訪し、ビールを飲みながらゆっくりつつきたい。
これから行ってみたい場所
「メキシコ」
インドで同じ師匠からタブラを習っている兄弟弟子のアメリカ人と、2020年の夏にメキシコで1ヶ月ほど合宿する予定があった。一緒にタブラをひたすら練習したり、ローカルフードを心ゆくまで堪能したりの毎日を過ごすのを楽しみにしていたのだが、もちろんそれは叶わなかった。新型コロナウィルスの猛威がいつか去ったとき、必ず実現したい夢だ。
U-zhaan(ユザーン)
タブラ奏者
オニンド・チャタルジー、ザキール・フセインの両氏からインドの打楽器「タブラ」を師事。2000年よりASA-CHANG &巡礼に加入し4枚のアルバムを発表。'10年に同ユニットを脱退後、U-zhaan × rei harakamiとして「川越ランデヴー」「ミスターモーニングナイト」等をリリース。'14年には初となるソロ名義のアルバム『Tabla Rock Mountain』を発表した。'17年に蓮沼執太との共作アルバム『2 Tone』をリリース。'20年にはインド・アーメダバードで開催されたインド音楽フェス「Saptak Annual Festival of Music」に出演している。
Instagram_@u_zhaan
Twitter_@u_zhaan
尾花 大輔
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「ローデンクレーター」
地球上とは思えない、とても神秘的な時間と空気が漂っており、この壮大な噴火口をアートとして表現しようという発想力、そして大地からのパワーに圧倒され、しばらくの間、空気の音と景色をただひたすら感じていました。ジェームズタレルの生涯をかけた超大作、完成の暁には是非もう一度訪れたい(当然、中に入ることも近づくこともできなかったというのもあったが、正直立ち入り禁止区域内で撮w)。
これから行ってみたい場所
「五島列島」
実は自分、特に旅には興味がなく、仕事で行くから結果、旅に出ているというタイプなんです。それぐらいのスタンスで旅に出た方が先入観がない分、結果いろんな収穫があるというか。そして、国内旅行の方が好きというのもあり、長期の休みが取れるなら、五島列島の源泉めぐりがしたいですね。未開の地で気になるのは、北センチネル島ですかね(答え違うかw)。
尾花 大輔(おばな・だいすけ)
N.HOOLYWOOD デザイナー
古着屋でバイヤーとショップマネジャーを兼任した後、古着のセレクトショップ「go-getter」の立上げに携わる。ショップ内のコーナーにてリメイクやオリジナルの展開を始め、「Mister hollywood」を2000年にオープン。翌年にはブランド〈N.HOOLYWOOD〉を設立。2002年、初のコレクションを発表。2007年にはパリで初の展示会「N.HOOLYWOOD COMPILE」を発表。2011SSより、コレクション発表の場をNYに移す。
Website_n-hoolywood.com
Instagram_@n_hoolywood
Tommy Ton
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「日本」
ロックダウンが起こる前、3年ぶりに日本を訪ねる計画を立てていました。この国には、私の人生を変えるような刺激的な文化に出逢えること、そしてその文化に浸る喜びが大きく、年2回、5年間、定期的に訪れていました。 私の人生観を大きく変えたのは、日本の美しさとその生活様式。 ここに生きる人々が、このような美しい地を築く為に注ぐ情熱と献身さに、私は大きな愛と敬意を抱いています。
これから行ってみたい場所
「アフリカ」
最も行ってみたい場所はアフリカです。 モロッコ、タンザニア、ケニア、南アフリカなど、訪ねてみたい国が多くあります。 アフリカは美しい文化や壮大な自然に恵まれた大陸です。 自然を間近に体感できるのはもちろんのこと、この大陸を構成するさまざまな人々との出会いは、きっと何ごとにも代え難い素晴らしい経験になるに違いないでしょう。
Tommy Ton(トミー・トン)
写真家 / 〈Deveaux〉クリエイティブディレクター
カナダ出身。かつてのファッションブログ「Jak & Jil」や、Style.comやGQ.comなどでファッションウィーク中のストリートスタイルを撮影した記事、自費出版プロジェクト「tommyton.com」などで広く知られる。現在は、ニューヨークのファッションブランド 〈Deveaux〉のクリエイティブ・ディレクターを務める。
Instagram_@tommyton
水上 剣星
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「ホーチミン・ハノイ 」
撮影で行かせて頂き、日本では食せない料理がとにかく美味しく印象深かったです。ローカルから高級店までコスパがよく、基本香菜が食べ放題で特にハノイで行かせて頂いたベトナムの鍋とフォーがとにかく美味しかったです。民族衣装などお土産や雑貨も豊富でした。バイク量がとても多い国ですが実際に行くとストレスが全くなく、何処か日本の下町を連想させるローカルな街並みも忘れられません。いつかまた訪れたい国の一つです。
これから行ってみたい場所
「スウェーデン」
スウェーデンから生まれた沢山のアウトドアブランドがあり実際にその地でどういう用途の中でアウトドアライフを過ごしているのか見てみたいです。5年以上住んでいたアメリカとは真逆で、北欧に行った事がないので情報が自分の中にあまりなく、是非いつの日か自分の目で見てみたいと思っています。
水上 剣星(みかみ・けんせい)
俳優・モデル
14歳からモデルとして活動した後18歳で渡米。帰国後は俳優業に転身し、数々のTVドラマや映画へ出演。キッズブランド〈himher〉を手掛けるなど活動の幅は多岐にわたる。
Instagram_@kenseimikami
林 真理子
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「モロッコ」
2016年の夏にパリ→モロッコ→パリ→NYと、プライベートと仕事で20日間くらいの旅に行ったことがあり、今までで一番刺激的な旅だったと思います。こういう国を跨いだ旅がまたいつか出来たらなぁ。モロッコでオススメは「ラ•ポーズ」という野外のレストラン。
これから行ってみたい場所
「リスボン・ポルト」
実際、昨年ポルトガルに行く予定だったのがコロナで断念。モロッコで同じ宿に泊まっていたカップルと話す機会があり、彼らがポルトガル出身。「サーフスポットがあって、美しい街で最高なんだよ」という会話から興味が湧きました。それから調べて、リスボンの素敵な街並みの画像から一層行きたくなりました。サーフィンをしたり、ただただのんびり散策をして過ごしたいです。旅に行くとスケジュールを詰め込んだり、あれやってこれやってとかが苦手なので、成り行きで過ごしたいです。
林 真理子(はやし・まりこ)
jonnlynx デザイナー / ブランドディレクター
1976年、鹿児島県生まれ。セレクトショップのプレス、デザイナーを経て2008年に〈jonnlynx〉を立ち上げる。
Website_jonnlynx.jp
Instagram_@mariko__hayashi
西山 勲
のいま行きたい場所
また行きたい場所
「サルバドール」
うんと遠くへ長い旅に出かけたい。重たい荷物にうんざりして座り込んだバス停とか、やっすい宿なんかでの不意な出会い。あるいはその地においての平凡であろう日常場面がまぶしく瞬く瞬間とか。旅の途上で訪れるそうした奇跡のような幸福のひとつひとつにまた触れたい。サルバドールの宿の窓から撮った写真がある。もう会うことのできない人と一緒に見た風景だ。取り返しのつかない時間と記憶が写真の前後に蘇る。そのような風景をもう一度見に行きたい。
これから行ってみたい場所
「秘密の海岸」
両親に会いに行くことは、感染病の心配が無くなったら実行したいと計画している旅のひとつ。父親が見つけたのだという引き潮の時にしか足を踏み入れることのできない秘密の海岸で、弁当を広げプラスチックのグラスに白ワインをなみなみと注ぐのだ。少し気持ちがほぐれてきたら、ポートレートを撮ると思う。できれば二人とも裸になってもらいたい。僕も裸になるだろう。生まれたままの姿で執り行われる家族水いらずの儀式。精神の旅。
西山 勲(にしやま・いさお)
写真家
1977年生まれ。東京・福岡を拠点に活動する写真家・グラフィックデザイナー。2013年に世界のアーティストの日常をドキュメントするビジュアル誌『Studio Journal knock』を創刊。
Website_nishiyamaisao.com
Instagram_@isao_nishiyama
Illustration_Ayu Iwashima