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COVERCHORD FEATURE

BISOWN
SS 2025 COLLECTION
Yuka Nakade Special Interview

今季よりお取り扱いがスタートしたユニセックスブランド〈BISOWN〉。
デザイナー・中出由佳氏へのインタビューから、その魅力に迫る。

COVERCHORDにて新たにお取り扱いがスタートした〈BISOWN(ビソウン)〉。

「日々を豊かにする装い、気取らない訪問着、心地の良い普段着、自らのための、美装、日装」がコンセプト。
“古・和・洋・用”の美を重んじながら、日本国内の産地それぞれの特色を生かしたオリジナル素材を通して、自然の強さや美しさ、儚さを身に纏うことができる衣服を提案している。

本特集では、デザイナーの中出由佳氏へインタビューを行い、〈BISOWN〉に込める想いやこだわり、デザインの着想源について話を聞いた。
アイテムの細部に宿る、ものづくりの哲学を紐解いてゆく。

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Yuka Nakade
Special Interview

― 中出さんがファッションに興味を持ったきっかけについて教えてください。

物心ついた時から洋服が好きだったのは、きっと洋品店を営んでいた祖父の影響が大きいと思います。当時はもうお店を畳んでいたのですが、いつもダンディでかっこいい祖父に憧れて、いつか洋服屋をやりたいと子供の頃から言っていました。
よりファッションに興味を持ったのは、小学生の時になぜか父が渡してきた一冊のモード誌がきっかけ。子供ながらに聞いたことのあるメゾンブランドはありましたが、ファッションとしては初めて誌面で見ることができて、その全てがとても刺激的で何度も読み返しました。自分の知らない世界がこんなにもあるんだと、ファッションに対する興味がどんどん広がっていったのを覚えています。

― 販売員から店長職、バイヤー、ブランドディレクターとさまざまな形でファッションに携わってこられた中出さん。どのような経緯で自身のブランド〈BISOWN〉をスタートされたのですか?

ずっと自分でなにかやりたいという気持ちはあったんです。ある時、前職に立ち上げたブランドがなくなるという話が出てきて、今なのかなと。出産と重なる時期だったので少し悩んだのですが、これまでお付き合いしてきた方たちや、バックアップしてくださる方も多かったので背中を押されてスタートすることになりました。

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― ブランド名の由来やコンセプトを教えてください。

ブランド名は造語なのですが、美しく装う「美装」と、日々の装いの「日装」という漢字をかけていて、日々を美しく装って過ごしたいという意味が込められています。また、「Sow」という英語には「種を蒔く」という意味もあって、自分自身の根底となるものやその先に繋がるもの、残していきたいものという意味合いも含んでいます。
〈BISOWN〉はテキスタイルのコンバーターさんという生地の開発をしている方と取り組んで立ち上げたということもあり、日本のさまざまな産地で作られている、その年、その土地ならではの良い素材を使って仕立てた上質なお洋服というのが大きなコンセプトになっています。

― 〈BISOWN〉の定番アイテムはなんですか?

ファーストコレクションから作り続けているのは、デニムです。基本的な形は変えずにリジットデニムと加工を施したものを出しています。ジャケットもまた、シーズンごとに素材やシルエットを変えながら出し続けているので、シグネチャーアイテムと呼べるかもしれません。そういうきれいめなアイテムやフラットなアイテムを崩していただけるような提案というのは、さまざまなアイテムを交えてずっと行っています。

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― デニムやジャケットの〈BISOWN〉ならではのこだわりポイントを教えてください。

ジャケットはテーラード工場で綺麗に仕立てているのですが、フォーマルになりすぎずに少し肩の力を抜いて着ていただけるようなサイジングや素材選びというのをシーズンによってこだわっています。デニムは作業着としてのルーツに倣って、強度のあるものにしたくて〈Levi’s〉などでも使われる14.5オンスぐらいのしっかりとした生地を選んでいます。
古着のデニムとは違う、スラックスライクな美しいシルエットにもこだわっていて、信頼のおけるパタンナーさんにいつもお願いしています。定番はストレートですが、細すぎず、太すぎず、ハイウエストすぎないというのもポイント。定番として長く穿いていただきたいので、あえてジャストウエストを狙っています。


― デザインをされるうえで特にこだわっているのはどういうところなのでしょうか?

ユニセックスで作ることで、私らしい個性を加えられたらと考えていて、マニッシュなアイテムを作る時は、レディースのアイテムをあえて男性のパタンナーさんにお願いをしたり、反対にメンズのアイテムに綺麗な曲線などの要素を加える時は女性のパタンナーさんに依頼するということも。一見分かりづらいような細部にこそ個性が出ると信じています。


― ユニセックスブランドとして、女性目線でのメンズウェアを作るためにどのようにデザインと向き合っていますか?

男性に向けた洋服に関しては、女性の私が作ることによってどんなアイテムにもちょっとした違和感が出ると思っていて、それがユニークなクリエイティブになるのではないかと思います。女性に向けた洋服の場合は、メンズアイテムを女性が着るうえで綺麗なバランスというのはいつも意識していますね。
私自身、メンズウェアも好きですが全身でがっつり着るわけではないので。例えば、メンズのアイテムにビスチェを重ねることで女性らしさが引き立つようなビジュアルなど、マニッシュなアイテムを女性らしく着こなすために必要なシルエットやスタイリングを提案したいと思っています。

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― 販売員やバイヤーといったこれまでのキャリアが、商品作りに生かされることもありますか?

これまでに見てきたり、自分が実際に着用してきた多くのものが糧になっていると思います。加えて、バイヤー時代からお店にいらっしゃるお客さまに届いて欲しいという想いでずっと服と向き合ってきているので、そういう目線は 〈BISOWN〉にも表れていると思います。今季のジャケットひとつとっても、昨今春や秋といったジャケットに適した季節がどんどん短くなっているので、少しでも長く着ていただけるように真夏でも着れるような涼しくて軽い素材を使用したりしています。
ビジュアルではジャケットをシャツのようにタックインしてスタイリングをしていて、この軽さや素材だからこそできるスタイリングの幅もしっかりと見せていきたいと思っています。

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― 今シーズンのテーマ「Gemütlichkeit(ゲミュートリヒカイト)」にはどういう意味が込められているのですか?

ドイツ語で「快適」や「心地よい」、「親しみのある」といった意味合いで使われている言葉です。快適さというのは〈BISOWN〉の根底にずっとあるものですが、今季はよりいっそうそういったプロダクトを作りたいと思い、テーマを選びました。
もともと好きな建築やインテリアプロダクトといったドイツ文化への興味が強いということ、またたまたま海外のスナップで見かけたドイツの子の着こなしが可愛くて印象に残っていて、直接的ではないですが少なからずそういう部分からも刺激を受けていると思います。


― そういったインスピレーションを反映したアイテムやスタイリングなどもありますか?

ドイツのプロダクトデザインには、堅牢さやミニマルさといった印象があって、スチールの使い方など刺激を受けました。ジャケットの綺麗な生地にメタルのボタンを合わせて崩してみたり、デザインにも落とし込んでいます。
スナップで見つけた太めパンツのストリートな着こなしに、バイカラーのコインローファーを合わせたスタイリングがすごく可愛くって、今季は太めのパンツを作りました。海外だと丈の短いTシャツを合わせてもさまになりますが、日本人だと幼くなってしまうなと思い、太めのパンツに合う縦長シルエットのトップスも作りました。

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― 普段はどういうところからインプットをされていますか?

以前は美術館に行ったり、写真やアートをよく観に行っていたのですが、今はなかなか時間も取れないので、これまでに集めてきた写真集を引っ張り出してみたり、海外のスナップをネットやSNSで探してみたりと、私の周りにある新旧の情報を組み合わせてアイデアを育んでいます。

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― ひとつひとつのアイテムに合わせた生地というのは、どのように選んでいますか?

世界に誇れる日本の生地を使っていきたいというのが、まず前提にあります。そのうえでありそうでなかったり、珍しいなと思うものから作りたいものを紐付けていったり、作りたいものを実現するために、生地作りからオリジナルで行うことも。選ぶ基準としては、着心地はもちろん、洗った後の風合いや着ているうちに摩耗していかないかなどもしっかり検証しながら選ぶようにしています。


― ご自身のスタイリングにおいて軸になっているものはありますか?

基本的にはなんでも着るのでこれといったルールはないのですが、クラシックなものやトラディショナルなもの、マニッシュなものは特に好きなので、そういったアイテムをどう自分らしく着崩していけるかというのは自然と意識しているかもしれません。


― 中出さんが個人的に惹かれるアイテムの特徴はなんですか?

いつもトータルでファッションを考えてしまうので、ひとつのアイテムに絞るのは難しいのですが、袖振りの綺麗なジャケットであったり、手作業で仕立てられたアンティークのブラウスなど、今の時代背景や環境では作ることのできないアイテムには目を奪われますね。着たいと思うのと同時に、手に入れておきたいという感情が掻き立てられる造詣美を感じます。


― 現在、大阪と東京の二拠点で活動をされている中出さん。普段はどのようなスケジュールで生活をされているのでしょうか?

基本は朝起きて、娘に朝ごはんを食べさせてから保育園に送り出し、帰ってきて夫と二人で朝ごはんを食べてから仕事。夕方になったら娘を迎えに行って、晩ごはん、お風呂、寝かしつけ。そこからが自分の時間ですね。余裕がある時期は映画を観たりして過ごしています。


― 忙しい日々の中で、どのようにリフレッシュをされていますか?

大阪に引っ越して環境が大きく変わったので、休みの日は家族でいろいろな場所へ出かけるようにしています。大阪からだと京都や神戸も近いですし、車で一時間くらい走れば丹波篠山など、これまで訪れたことのなかった自然豊かな場所もあるので、とても新鮮な気持ちでリフレッシュできます。

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ご自宅兼仕事場
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自然豊かな丹波篠山の風景

― 素敵だなと感じるのはどんな人ですか?

間合いとか、空気感とか細かい部分だと思うのですが、話し方や所作が美しい人は素敵ですよね。あとは探究心を抱き続けている人。憧れるのは、スタイリストの北村道子さんです。同郷の石川県出身ということもあり以前から注目していましたが、たまたまお目にかかった際に感じた圧倒的なオーラに驚きました。いくつになってもブレずにご自身を確立されていて、探究してやまない人にはついつい惹かれてしまいます。


― 人生において大切にしていることはありますか?

自分のやりたいと思ったことを実現できるように行動すること。その結果として今の私があると思うので。


― これからやってみたいことはありますか?

もちろんブランドを長くやれたらなという気持ちはあるんですけど、かといって長く続けることだけに注力せず、今を大切にしていきたいです。また、バイイングの仕事も好きだったので、自分のブランド以外でも表現できるようなことはやっていきたいなと思っています。

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中出由佳(なかで・ゆか)
新卒でアパレル業界へと足を踏み入れ、販売員から店長職、バイヤー、ブランドディレクターなどさまざまな形でファッションと関わる。セレクトショップ〈1LDK〉のバイヤー、プライベートブランドの立ち上げや、〈BLOOM & BRANCH〉のデザイナー兼ディレクターを務めたのち、2024年のSSシーズンより、自身のブランド〈BISOWN〉を立ち上げた。

Instagram_@nakadeyuka_
Instagram_@bisown_

Text_Mikiko Ichitani

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