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特集記事

COVERCHORD EXCLUSIVE

SUNSHINE+CLOUD × nonnative
高須勇人 × 藤井隆行 インタヴュー

葉山のセレクトショップ〈SUNSHINE+CLOUD〉と、〈nonnative〉が
コラボレーションアイテムをリリース。両ブランドのデザイナーに話を聞いた。

自然豊かな海辺の街、神奈川県・葉山にあるセレクトショップ〈SUNSHINE+CLOUD〉。同店での〈nonnative〉取り扱いを記念し、コラボレーションアイテムがリリースされた。

本特集記事では〈SUNSHINE+CLOUD〉代表の高須勇人氏と、〈nonnative〉デザイナーの藤井隆行氏による対談で、コラボレーションの経緯を語ってもらった。

葉山で暮らし、海がそばにあるという環境に身を置く二人。そこで育まれた感覚や、互いの共通点を交えながら、今回の葉山発コラボレーションを紐解いていく。

Talk about
SUNSHINE+CLOUD

神奈川県・葉山に住んでいるなら、知らない人はいない。そう言い切れるほど、ある意味“葉山の顔”として成り立っているのが、セレクトショップであり、カフェレストランもある〈SUNSHINE+CLOUD〉。オーナー兼デザイナーの高須勇人が手がけるオリジナルアイテムが、海辺らしい気負いのない空間にディスプレイされている。敷地内にはシンボルツリーとなる大木が美しい緑を飾り、海のカラッとした空気がフロア内にも漂っていた。

オリジナルアイテムに加え、西海岸で若き日を過ごした高須が想う“時代に流されない心地いいもの”。それが、洋服だけではなく、家具や雑貨も交えて並ぶ。このリラックス感はどうだろう。カラリとした潮風と共に暮らす老若男女に愛される理由は、店を訪れた誰もが肌で感じるに違いない。

―なぜ葉山にセレクトショップを出したのでしょうか?

高須:〈SUNSHINE+CLOUD〉が葉山にオープンしたのは1995年。一店舗目は代官山にあり、それに次いで葉山に二店舗目をつくりました。なぜ葉山だったかと言うと……まぁ、自分が逗子で暮らしていたからですね。どうしたら東京に出ないですむかを考えて、葉山に店があれば都内へ行かなくてもいいかな、と。

藤井:僕も6年前に都内から葉山に引っ越してきたので、その感覚はよくわかります。このへんに住んでいる人がみんな考えることですね。

高須:でも、葉山の別の場所にあったんですよ。20坪くらいのところで。2005年ぐらいからずっと移転を考えていて2013年に現在の場所に移りました。ここは和菓子屋さんの保養所だったのですが、とにかく敷地面積が広い。それで、遠方からも人が来てくれるし、どうせならカフェも併設しようと思って。ウェアや小物、あとは書籍や花、次いで家具も扱うようになりました。

藤井:このお店のラフな空気は、都内では出せないでしょうね。海がそばにあるから成り立つ。それに、店頭にはときどき高須さんも立っているでしょ? それが目当てで会いに来る人も多いんじゃないですか? 僕も店に立ちたいと思うんですが、スタッフに止められます(笑)。

高須:そうですね、お客さんと接するのが好きなんですよ。前はほぼほぼお店に立っていたので。商品を買う・買わないは別にしてね。話してみてわかることが多いので。

―高須さんはもともとアパレル業界にいたのでしょうか?

高須:実は、祖父、父ともにアパレルメーカーの人間なんです。祖父の代は着物からちょうど洋服に変わる時代でした。父の代ではいろんなブランドをやっていました。だから服はずっと身近にあった感じです。代官山の店も最初は父の会社の事業の一環で出来たものでした。

藤井:そうだったんですか。家業だったんですね。入社前はどうされていたんですか?

高須:父の会社に入る前は、アメリカの大学で過ごしていました。当時はアイダホ、ワシントン、カリフォルニアと、転々としていましたね。大学の経済学部に在籍していましたが、ほとんどテニス三昧(笑)。卒業してもう少し放浪する予定だったのに、父が病気になったので帰ってこい、と。そこから父の会社に入り、手伝うことになったんです。

―〈SUNSHINE+CLOUD〉のシャツは美しい色彩感覚が印象的です。これらは高須さんのアメリカ暮らしで培ったものでしょうか?

高須:どうでしょうね。カリフォルニアは陽射しが強くて、色彩もはっきりしているので、そうかもしれないですね。ただ自分が着たいものを作っているだけですけど。自分が大学生の頃なんて、MADE IN USAのチャンピオンのTシャツやリーバイスの501か短パンを毎日着ていましたよ。80年代はそれが普段着で、おしゃれでも何でもなかったですね。

藤井:高須さんが手がけるシャツを見ていると、肩幅と着丈のバランスがウチとは違うんですよ。パンツからアウトするのを前提に作られているから、まず着丈が短い。難しいパターンだと思いますよ。ボックスでもない、ルーズでもない、この感じが高須さんだなって思います。

高須:今日着ているのは『ウエストコーストボタンダウン』っていうシャツです。マイナーチェンジはありましたが、この感じで30年近くずっと続けていますね。僕の肩幅がガッシリしているので、それに合わせた形になっていて。Tシャツの上から羽織ると、ちょうど良いんですよ。あと、襟腰を無くして1枚のワンピースカラーでユルッとさせています。

藤井:開襟だけどボタンダウンだから、襟がキレイに立つようになっていますね。

高須:そう、アロハシャツに近いんだよね。

藤井:でも、アロハシャツには見えないという。あと、生地の色が絶妙ですよね。

高須:生地はイタリアの〈CANCLINI〉をはじめ、色々使っています。特に〈CANCLINI〉の生地ですが、これは日本だと絶対に出せない色。山や湖に囲まれた、避暑地特有の風土が為せる技だと思っています。

藤井:独特ですよね、この色彩センス。日本の生地屋さんでもマネしているところが結構ありますよ。

高須: ちなみに〈CANCLINI〉は生地によって名前が付いているんです。それがすべて地名で、去年は西海岸、今年はメキシコ。ティフアナとか、サンタバーバラとか。しかも、ちゃんとその地名っぽい色や形になっている。かっこいいですよね。シーズンによってテキスタイルを生産するのですが、それが時代と見事に合致している。きちんとマーケティングされている証拠です。

藤井:時代の流れというか、その時の景色が見えているんでしょうね。

Talk about
AURORA SHOES

―お二人は葉山暮らしですが、互いに知っていたんですか?

藤井:僕はもちろん知っていました。引っ越してからよくお店に来ていましたし。葉山の飲食店でも何度かお見かけしていました。

高須;僕も〈nonnative〉のことはもちろん知っていて。自分たちと方向性やアプローチは違うけれど、いろんな意味で見習うべき点が多いと思っていました。接点はなかったけど、興味深く見ていましたね。

藤井:それはこちらもです。地方でこんなに大きな店舗を構えて、家具も扱って、東京からお客さんを呼べて。宿泊施設も手がけている。僕らが考える理想像に近いな、と感じていました。

高須:ありがとうございます。ちなみに、ウチはオープン当初から〈AURORA SHOES〉を扱っているんですが、葉山のお客様で広告代理店の方が藤井さんの熱烈なファンだったんですよ。追っかけですね。〈AURORA SHOES〉のリブランディングを考えたとき、彼に相談したら、“それなら藤井さんしかいないですよ!”って、しつこいぐらいに何度も言うわけ。

藤井:なんとなく風のウワサで聞いていました。でも、直接オファーされたわけではないし、自分から言うことでもなかったので、“あ、そうなんだ”ぐらいに留めていました。

高須:で、ちょうどその日も社内で〈AURORA SHOES〉のミーティングがあって。終わってから、近所の飲食店で藤井さんにバッタリ会ったんですよ。後日、僕が近所の別の店で家族と食事して泥酔していたら、隣にまた藤井さんがいたこともあった(笑)。これはもう、そういう流れなんだなって思いました。

〈AURORA SHOES〉は、1990年初頭にニューヨーク北西部にあるオーロラという村で生まれたオイルレザーのコンフォートシューズ。モカシンのようなスリップオンやサンダル、足首まで包むブーツタイプがあり、その1足ずつを職人がハンドメイドで手がけるため、製作数に限りがあった。本革の最上級とされるフルグレインレザーを使い、高品質な米国産の革靴の代表として往年のファンが多い。

―では、〈SUNSHINE+CLOUD〉で〈AURORA SHOES〉を扱うに至った経緯を教えてください

高須:〈AURORA SHOES〉の工房は、人口500人くらいの小さな村にあるんです。

藤井:村ですか。

高須:そう。町ではなく村。CITYでなくVILLAGE。たぶん人より牛の方が多い。30年ぐらい前に、アメリカの友人から「こんな面白い靴があるよ」って紹介されたのがきっかけ。それで、サンプルを持って帰国したんですが、自分の店で仕入れる前に雑誌で紹介されてしまって。すごく話題になっちゃったんですよ。確か『anan』か『Olive』だったと思う。なので、慌ててもう一度渡米して、キャリーケースに数足入れてこっそり持って帰りました。

藤井:密輸ですね(笑)。今だから言えることだけど。そういう時代でしたね。ちなみに、僕も〈AURORA SHOES〉が好きで、定番のミドルイングリッシュとチャッカブーツも持っています。丈夫で履きやすい。どことなく、ドイツの革靴のニュアンスも感じるんですよね。

高須:そうですね。いわゆる80年代のヒッピーが履いていたようなクラフトシューズの走りですよね。〈AURORA SHOES〉は革がなじみやすいので、その人の足の形になる。濡れても、まぁ問題ないから、海辺で短パンに素足で履くのも良いね。西海岸のサーファーも結構履いています。今、僕が履いているのは、ソールを3回張り替えて愛用しています。今日は撮影があるから、しっかり磨いてきましたよ。

藤井:COVERCHORDでも以前から扱いたくて、実は何度かオファーしているんです。でも、その度に断られてしまって。

高須:いや、本当に在庫がなかったんです。なんせ職人が当時4人しかいなくて、オーダーしても2年待ちとかザラでした。生産が全く追いついてなかったんですよ。今は新しいオーナーに変わったので、需要と供給のバランスが取れてきました。

藤井:こういうブランドってもう少なくなりましたよね。今回ウチでも扱うことになって感慨深いです。メンズもレディスもあるので、もっと若い世代に広まると良いですね。

高須:ええ。今まで愛用してくださった方を含め、これからは20代やその次の世代にもどんどん履いて欲しいと思っています。

Talk about
SUNSHINE+CLOUD × nonnative

―最後に、今回の〈SUNSHINE+CLOUD〉×〈nonnative〉エクスクルーシブアイテムについて

藤井:今回コラボものを作るうえで、まず〈nonnative〉らしさをどう表現しようかというのがありました。あと、あまり高い商品にしたくなかった。

高須:で、すでにウチの定番になっているTシャツとバッグ、キャップをコラボすることになったんです。

藤井:〈nonnative〉ではこういったカレッジフォントを使ったことがなかったので、良い機会だからやってみようと。どうせなら、こういうタイミングでしか出来ないものをやりたかった。あと〈SUNSHINE+CLOUD〉にブラックやネイビーっていうイメージがなかったので、あえてその2色を選んだ感じです。店に馴染むけど目立つ、みたいな。

高須:あとね、僕が個人的に〈Stüssy〉や〈Supreme〉が好きなんです。

藤井:そうなんですね。

高須:この店に合う・合わないは別にしてね。ああいう服をオッサンが着るのがいいな、と思って(笑)。で、店も大きくなって、地元からも遠方からも感度の高い人が集まるようになってきて。もう少し〈SUNSHINE+CLOUD〉の間口を広げたいと考えていたんです。店でレディスは充実していたんですけど、メンズは少なかったのもあった。それで、藤井さんとつながったご縁で、〈nonnative〉を扱わせていただくことになりました。

藤井:で、今回のコラボに至ったという。まさに、6年越しの企画です。

高須 勇人(たかす・はやと)
1964年東京都出身。19歳でアメリカに留学し、20代の多感な時を1980年代のカリフォルニアで過ごす。1990年に帰国、1992年にG.O.D.(代官山)1995年にSUNSHINE+CLOUD(葉山)2009年にPARADISE STORE(奄美大島)をスタートさせる。服、雑貨、家具、店舗内装、住宅リフォーム等のデザインも手掛ける。
Web_sunshine-cloud.com 

藤井 隆行(ふじい・たかゆき)
1976年生まれ。奈良県出身。武蔵野美術大学 空間演出デザイン学部を中退後、セレクトショップで経験を積み、2001年より〈nonnative〉デザイナーに就任。以来、独創的で洗練されたモノづくりを展開、〈nonnative〉の世界観を確立してきた。
Web_nonnative.com 

Interview & Text_Tokiko Nitta

SUNSHINE+CLOUD
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