COVERCHORD FEATURE
燕鎚起銅器・富貴堂
JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2024
日本各地の伝統的工芸品が東京に集う「JTCW 2024」が開催。
新潟県燕市の「燕鎚起銅器」の〈富貴堂〉をご紹介。
Online受注販売期間は終了いたしました
ありがとうございました
都内28のセレクトショップにて、日本各地の伝統的工芸を紹介する「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2024(以下、JTCW 2024) 」が開催される。
今年COVERCHORDがご紹介するのは、新潟県の燕市の伝統工芸、「燕鎚起銅器(つばめついきどうき)」の〈富貴堂〉。 会期中はNakameguroとOnlineで受注販売を行う。
本特集では、実際に〈富貴堂〉の工房を訪ねて取材を行った。プロダクトの紹介と共に、道具としての機能美とシンプルネスを追求した〈富貴堂〉のモノづくりの本質に迫る。
燕鎚起銅器
富貴堂
燕鎚起銅器の歴史
「鎚起銅器」とは、銅という素材の伸展性を利用して、1枚の銅板を鎚(つち) で打ち延ばしたり、絞ったりして形作られる金工品のこと。
その起こりは江戸時代初期にまで遡り、農民の副業として始まった和釘(わくぎ)づくりが発端とされている。
江戸時代中期頃、仙台から職人が訪れ、鎚起銅器の製作方法を伝え、やかんの生産を始めたことが「燕鎚起銅器」の起源。
この地方の弥彦山に良質な銅が採れる銅山が拓かれたこともあり、燕一帯は国内唯一の「鎚起銅器」の産地として、今日まで伝統技法を磨いてきた。
通商産業大臣により、1981年に伝統的工芸品に指定された「燕鎚起銅器」。
その特徴は、丁寧に鎚起することで生まれる滑らかで光沢のある質感と、長年手入れをしながら使い込むことで増してゆく銅素材ならではの風合い。
様々な日用品が生産され、やかんや鍋など、同じ用途の作品であっても工房や職人ごとに形状や色合いに特色が現れる。
COVERCHORDは、数ある「燕鎚起銅器」工房の中から、かねてより交流のあった〈富貴堂〉を訪ねた。
富貴堂を訪ねて
1945年の開業以来、三代に渡る〈富貴堂〉が生み出す製品に通底するのは、「使われる道具」であり、「シンプルな形」であること。言うは易く行うは難し。
実際に使われる道具であることは、誠意を持って使い手に寄り添うということ。シンプルであることは、一切のごまかしが効かないということ。
〈富貴堂〉のプロダクトには、シンプルな道具としての、物静かな美しさが宿っている。
静謐な工房には、銅を打つ槌音が一定のリズムで響く
お話を伺ったのは代表取締役の藤井健(ふじい・たけし)氏。
「燕鎚起銅器」職人としてのキャリアは、ひょんな巡り合わせから始まる。
銅器屋の息子として生まれ、家業を手伝うなど、銅器との関わりはごくありふれた生活の一部にあれど、家業を継ぐつもりはなかったという。
高校を卒業し職を探していた折、〈玉川堂〉の求人が目に止まる。二百年弱にわたり伝統技術を継承している、いわば「燕鎚起銅器」普及の祖とも言える老舗企業だ。
内装屋への就職を考えていたが、求人そのものの珍しさと、祖父の出身工房という縁もあり〈玉川堂〉へ入社。2年に渡る下積みの日々で、職人としての礎を培った。
「錫引」という工程
〈玉川堂〉での下積み時代は
とにかくこの工程の繰り返しだったという
二代目である父の入院をきっかけに、健氏は家業を継ぐ決心をする。
〈玉川堂〉での修行の日々を心から愉しんでいた二十歳の氏にとって、家業を継ぐことは正直なところ苦渋の選択だった。
けれど、二代目が培ってきた仕事や取引先との関係に中途半端な穴は開けられない。「今戻る必要がある」そう考えるに至り、〈富貴堂〉三代目としてのキャリアが始まった。
はじめは父がやってきたことを見様見真似する日々。そのうちに百貨店での販売も経験し、同氏にとって大きな実りをもたらしたという。
求められるのは高いクオリティと、日常生活に根ざすプロダクト。〈富貴堂〉の作り手として技術を研磨し、同じ境遇を持った伝統技法の後継者たちと交流し、さらに売り手としての視点をも養う、忙しない日々を送った。
仕上げの工程
底面に刻印を打ち込み、柄にはとうの蔓を巻く
本取材では、「珈琲サーバー」が完成するまでの製作工程を追った。
一枚の銅板がひとつの形へと仕上がってゆく様子は、まるで命が吹き込まれてゆくかのよう。
健氏のモノづくりのスタイルは、積み重ねてきた経験や、あらゆる人々との交流の中で研磨されてきた。
転機となったのは、とあるコーヒ―専門店との出会い。
その道のプロたちが、仕事の道具として最も使いやすい形を模索し、改良を重ねてゆく過程の中で、自分の作りたいモノが明確になっていった。
〈富貴堂〉のプロダクトには、複雑な機構を取り払い、道具としての実用性を追求した、究極のシンプルネスが宿る。
表現者としてではなく、プロとして。人々の日常に寄り添うモノをまっすぐに作り続けている。
少数精鋭の工房内には、鎚を打つ若い職人の姿がある。
数多くの工房で嘆かれる後継者問題について、健氏は一国一城の主として、静かに意見する。
「産地や屋号、そして技法。脈々と培われてきた伝統工芸を継承させるという考え方は大切。しかしそれ以上に、“作り手として生きてゆきたい”と思う強い気持ちと、自らも続ける事が自分の役割と考えます」
昨今、高いモチベーションを持ち、モノづくりの道を生業に選ぶ若者は存外多いという。
何を作ったら自分らしくあれるか。その解に辿り着く機会や場を与えられるかが大切だと語る。
「例えば屋号の下にあっても、その子が新たに考え作り上げた作品・品物には名前を刻印し、売れるまでを見届けさせる。“自分が作ったモノが売れた”という成功体験の積み重ねを作るんです」
百貨店での販売経験の中で売り手としての視点を養い、人との関わりの中で自分らしいモノづくりの解を導き出してきた同氏らしい方法論だ。
「技法や受け継いだものを活かし、人の創作意欲を育てる。それがたとえ産地や屋号の外に出ても、この国の新たな伝統工芸になれば上々かなと思うんです」
将来、人々のライフスタイルがどんなに変わろうとも、〈富貴堂〉のプロダクトは、永く愛着を持って使いたくなる確かな道具であり続けるだろう。
Online受注販売期間は終了いたしました
ありがとうございました
JAPAN TRADITIONAL
CRAFTS WEEK 2024
燕鎚起銅器・富貴堂
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会期中はCOVERCHORD Onlineでも同時開催いたします。
オンラインでの受注販売に関しましては、下記の点をご確認ください。
・受注販売期間は、10月31日 (木) 23:59までとなります
・完全受注生産になります。お客様のご都合での交換や返品、キャンセルはお受けできません。
・オーダーの際に全額先払いとさせていただきます
・商品お渡し予定は、2025年2月下旬~3月下旬頃となります